台湾ドリームに挑む独立リーグのヒーローたち 小野寺賢人と鈴木駿輔が切り開く道
2022年にはNPB球団のテストも受けたが指名漏れ。足りないのは球速だと、2023年にはパーソナル指導を受けて体を作り直した。平均球速は2キロほどアップ。 一時期は制球が乱れ防御率が悪化したが、全体的にパワーは増し、バランスも取り戻した。球場表示では150キロを計測。10勝を挙げ、リーグ優勝に貢献してシーズンMVPも獲得した。それでもドラフト指名はならず。 だが、CPBL台鋼ホークスからオファーが届いた。ホークスは2024年からの一軍参入に備え、2023年冬に行われたアジアウィンターリーグに単独チームで出場。そこで外国人選手のテストを行うという。参加を打診された小野寺は、ステップアップの好機だと挑戦を決めた。
台湾で好投し異例の年間契約獲得
アジアウィンターリーグでの小野寺は、台湾アマチュア選抜、CPBL選抜、JABA選抜、NPB選抜レッドを相手に4試合に登板し、防御率0.92の好成績。 途中、臨時コーチとしてチームに帯同した吉見一起氏に金言を授かる場面もあった。 「良いコースにボールを集めるだけがコントロールじゃない、という話を頂きました。前年にシュートを投げ始めた時、お手本にしたのが吉見さんの動画だったので、御本人から直接アドバイスをもらえて嬉しかったです。決勝ではそのシュートで併殺が取れて、結果的にキーになりました」
決勝のNPBレッド戦ではNPB選手を相手に8回まで無失点。9回に本塁打を打たれ、足が痙攣して降板したが、試合後のインタビューで洪一中監督は、小野寺の2024年契約を発表した。NPB経験のない外国人選手が年間契約を勝ち取るというのは極めて異例のことだ。
ライバルは「BC最強投手」鈴木駿輔
既に台湾のマウンドを踏み、評価を受けて今季に挑む小野寺。その小野寺がBCリーグで常に意識してきたのが、リーグNo.1投手と言われた鈴木駿輔だ。 鈴木駿輔は、野球のエリートコースを歩いてきた。高校は名門聖光学院に入学、甲子園も経験した。青山学院大へ進学しプロを目指していたが、指導者が変わる中で道を見失い、これではいけないと2年で中退を決意。独立リーグへ飛び込むという大きな決断を下した。 筋は通したが、NPBにも影響力を持つ名門大学からの中退で、ドラフト指名は人よりも厳しいと見られた。 「マイナスからの出発でした」と鈴木は振り返る。 BC福島レッドホープスに在籍した2年目、鈴木は投手三冠の素晴らしい成績で一躍ドラフト候補に上がるも、指名はなかった。「NPBに行くため」同じBCの信濃グランセローズに移籍。翌年に荒西祐大投手兼任コーチ(元オリックス)と出会ったことが、鈴木を大きく成長させた。 「お前はNPBに行きたいという気持ちが前に出過ぎてるから、それを無くせ」荒西にはそう言われた。 「あと言われたのが、ストライクゾーンの9分割の中に強い球を投げれば、見逃すのもストライク、空振りもストライク。9分割のどこかに強い球を投げていけばいいんだと。そう思ったら、自ずと結果に結びついていきました」