「私人逮捕系YouTuber」裁判で暴かれた“過激演出”の実態。“収益の総額”も明らかに
被告人らの経歴と動画収入
検察側の冒頭陳述などによると、2021年に今野被告人が責任者を務めていたメンズエステで奥村被告人が雇われることになり、2人は知り合ったという。 その後、動画の再生回数による収入を得ようと考えて、2023年1月からは「ガッツch」を開設。痴漢や盗撮の撲滅を謳って「私人逮捕系」の動画投稿を始めたとのことだ。 2023年9月の時点でチャンネル登録者は22.8万人、動画投稿数は285本。そして、同年5月から10月までの5か月間だけで、約946万円の収入があったとのことだ。
事件当日の詳細
検察側の冒頭陳述により、被告人らの当日の行動などが明らかとなった。 被告人らは、日頃から「私人逮捕」をする相手を探していたという。そのとき、XでB氏の覚醒剤に関する投稿を見つけた。 そして今野被告人らは、B氏に覚醒剤を持ってこさせれば、その場で警察に逮捕される動画が撮影できると考えて、「ユウ」という女性を装って覚醒剤を使用した性交をしたい旨のメッセージをB氏に送信し、覚醒剤の所持をそそのかしたと検察側は指摘する。 2023年8月11日午後3時頃から、今野被告人らは秘匿性の高いメッセージアプリを使って、「新宿住んでる女です」、「寂しいので遊びたいです」などとB氏にメッセージを送った。 さらに、覚醒剤に詳しい人しか知らないようなワードを駆使したメッセージを送信したことで、B氏は信じてしまい、当時は覚醒剤を持っていなかったものの、わざわざ入手し持参させたと検察側は指摘している。
逮捕の瞬間
被告人らの作戦に引っかかってしまったB氏は、同日の午後9時頃に待ち合わせに指定された新宿区内の路上に車に乗って現れた。今野被告人は、B氏が現れたことを遠目から確認して110番通報。 カメラマンの奥村被告人が動画を撮影しながら、今野被告人は車内にいたB氏に向かって「ユウです。ユウです」と言って近づいていった。 その後、被告人らは、通報を受けて臨場した警察官らに対して、B氏を指さして「とりあえず、所持品検査をしてください」と職務質問するように執拗に迫った。当然、何も分からずに出動させられた警察官らは混乱した状況を把握するために、説明を被告人らに求めたものの、被告人らは「こっちを先にやってください」などと語気を強めていた。 検察側は動画を証拠として提出し、法廷内のモニターを使って映し出された。約14分間の動画で、傍聴人には見えない位置にモニターが配置され、音声はイヤホンからという徹底ぶり。被告人らは食い入るようにモニターを見つめていた。