氷衛星の地下、液体を湛える海に生命はいるのか 「地球外生命」探査の最前線に迫る
たとえば、あなたは目を閉じても凸凹道を転ばずに歩ける。脳が無意識のうちに力覚フィードバック制御を使って手脚を動かしているからだ。逆にもし力覚がなければ、目が見えていても安定して歩くことは困難だろう。 EELSの最初のプロトタイプは力覚を持っていなかった。それが複雑な地形での移動や垂直移動を困難にしていた。そこで僕たちは、EELSの各モジュールに力とトルクを感知するセンサーを挟むことにした。プロジェクトのスケジュールに間に合わせるため、Hebiという会社が市販しているアクチュエーターを使った仮のロボットを作った。
内輪でHebi EELSと呼んだこのロボットは、ヘビの真ん中を省いて電子機器を乗せた箱を設置したので、ヘビというより2本脚のクモのような形になったが、基本的構造はEELSと同じである。 このHebi EELS ロボットを用いて挑んだのが、プロジェクトの本丸、垂直方向の移動だった。最初はJPL内にある6畳ほどの広さの冷凍庫に垂直の氷の壁を作って試験したが、もっと現実に近い環境でテストする必要があった。そこで僕たちが選んだ最終テストの場所が、カナダのジャスパー国立公園にあるアサバスカ氷河だった。
小野 雅裕 :NASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)技術者