「役との共通点はジップロックがお財布代わりなところ」朝ドラ俳優・趣里が型破りすぎる役に挑む
役との共通点はお金をビニール袋に入れて持ち歩くところ?
――本作のどんなところに注目してほしいですか。 まずは亮子の諦めない姿です。真実までたどり着き、裁判に勝つという信念。引力のある亮子がモンスター級に自由になっていく姿をぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。そしてやっぱり、作品は皆さんと一緒に作るもの。型破りなキャラクターだからといって1人で進むのではなく、リアクションや掛け合いでこのドラマを作っていきたいです。 正直一筋縄ではいかない問題もあると思います。あえてそこにフォーカスするんだ、という果敢さもある。今は小さいかもしれない声をすくい上げることで、自分自身も含め、考えるきっかけにもなれたらいいと思います。 ――亮子は常識にとらわれない人。対して、今回コンビを組むジェシーさん演じる杉浦は常識を重んじる人。趣里さんご自身はどちらのタイプですか。 一般的な常識はあるタイプだと思います。でも「普通」とか「常識」ってなんなのか、と考えることもあって。だって、自分では普通だと思っている行動や言葉も、友人からは「変」って言われたりもしますから。いろんな人や考えがあって当たり前ですし、自分の「普通」がつねに基準になるわけではないと知っていたい。 ――それでも、常識だとされていることでこの常識はちょっと……と思うことはありますか。 質問の意図とは違うかもしれないのですが、最近どこのお店も現金払いじゃなくなりすぎていませんか(笑)? 新札も発行されたばかりなのに、なかなか手にする機会が訪れなくて。だから、お店がOKならば現金で支払うようにしているんです。作品中で亮子は、ビニール袋に現金を入れて持ち歩く設定なのですが、実は私も、一時期はジップロックがお財布代わりでした。すぐに取り出せるし、楽じゃないですか。今はお財布に入れていますけどね。今ごろ思い出した亮子との共通点です。
自分から余計なものを取り払った姿が今回の役
――趣里さんが主演をつとめた映画『ほかげ』の塚本晋也監督がインタビューで、「趣里さんは憑依型の俳優だ」とおっしゃっていました。今回、役を憑依させるために実践したことはありますか。 到底理解し切れないくらい難しい役柄だとも感じていますが、裏を返せば、演じる上ではすごく振り幅があるということ。自分の直感や衝動に任せて動いているように見える亮子も、実は対峙する人々からもらうものによって動かされているんですね。だから亮子として、一緒に演じる皆さんにどこか乗っかる気持ちでもいます。 人からどう見られるのかとか、これを言ったら踏み込みすぎているかなとか、自分の立場がこうだからとか、時代や周りを気にして躊躇している自分の今の状態から一歩踏み出して、むき出しの状態になってみるのが亮子に近づくいちばんの方法なのかもしれない、と思い始めているところです。 ――趣里さんがこれまで演じられた役は、映画「生きてるだけで、愛。」の寧子やドラマ『ブラックペアン』の猫田など、言葉を感情表現の手段にしない人物が多いですね。趣里さんご自身は、自分の感情は言葉にするタイプですか? 喜びの感情は素直に伝えられるけれど、負の感情はなかなか伝えられない。意外と我慢しちゃうタイプで、心配が募っていってしまうんです。そんなときは、話せる人にだけひっそり話して、時が過ぎるのを待ちます。すると、あるときふと「どうでもいいかもしれない」という瞬間が訪れる。若い頃は、たった一つの小さな出来事でこの世の終わりだ! と絶望していたけれど、歳を重ね、こんなことで終わるわけがないと思えるようになりました。