視力と聴力が低下することも?軽視される「帯状疱疹」の恐怖 新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない
■糖尿病では一層リスクが高まる 台湾からの研究報告では、糖尿病の人は帯状疱疹のリスクが38%増加し、さらに冠動脈疾患や脳梗塞、末梢血管病、心不全などの心血管病を合併すると19%リスクが上昇すると解析している。つまり、心血管病を合併した糖尿病患者では64%もリスクが高まるのだ。 また、免疫が関係する疾病や、その治療薬がリスクを上げることが知られている。身近なところでは、アトピー性皮膚炎の患者さんは帯状疱疹のリスクが18~33%高いことが報告されている。さらに治療に用いられるJAK阻害剤という薬の一部が帯状疱疹のリスクを上げるとの報告もある。JAK阻害剤は比較的最近発売され、いまでは円形脱毛症や関節リウマチ、炎症性腸疾患など多くの自己免疫疾患の治療に用いられており、治療を始める前に結核など感染症のチェックを行う。ぜひ帯状疱疹ワクチン接種の有無も事前に考慮すべきだ。
帯状疱疹予防ワクチンには生ワクチンのビケン(皮下注射)と不活化ワクチンのシングリックス(筋肉注射)の2種類がある。接種回数はビケンが1回(1万円前後)、シングリックスが2回(4万円前後)だが、持続性はビケンが5年程度、シングリックスは9年以上だ。シングリックスは50歳以上の方が接種対象だったが、2023年6月からは、18歳以上49歳までの人も、医師が帯状疱疹の発病リスクが高いと判断した場合は接種してよいことになった(ビケンは50歳以上が対象)。
■軽視されている帯状疱疹という病気 医療者でも、帯状疱疹を軽視している人は多い。ましてや一般の方々であれば致し方あるまい。ヘルペスを帯状疱疹だと間違えているパターンが多いのと、帯状疱疹そのものは知っていても、さまざまな合併症が起こりうることを知らない人は多い。 最近、私のところに定期的に通院されている患者さんが左眼の周り(三叉神経眼枝)の帯状疱疹になり、最終的には左眼の視力と左耳の聴力が低下してしまった。帯状疱疹は神経の中でウイルスが増え、その神経が支配する領域にウイルスをばらまく。血管にも神経は分布しているので、血管の炎症が起きれば血流が滞り、さまざまな器官や臓器の機能低下を引き起こすのだ。