絶品アジフライに極上サバの漬け丼……房総の港町食堂に行ってみた!
アジ、サバ、イワシなどの俗に言う“青魚”はいたみやすく、鮮度が味の決め手になる。冷凍技術の進歩はめざましいが、やはり港町でとれたてを食べるのが一番だろう。 そんなうまい青魚を求めて、千葉県房総半島へ向かった。房総半島は穏やかな東京湾側の内房と荒々しい太平洋側の外房に囲まれ、多彩な魚介類が水揚げされる。 金谷港近くのザ・フィッシュで見つけた人気メニューの一つ。地魚など7種の海鮮丼はこちら
まずは内房の富津市金谷港へ。東京湾を横断して神奈川・久里浜港へ至る東京湾フェリーの発着港であり、東側にはギザギザの稜線が特徴的な鋸山がそびえている。港からすぐの金谷食堂で“黄金アジフライ”の旗を見つけ、さっそく訪ねてみる。 黄金アジは外海を回遊することなく浅瀬に生息する根付きアジ(マアジ)を指し、黄色の魚体から呼び名が付いた。 「黄金アジが生息する浅瀬はエサが多いため、外海のアジよりも脂がのり、身がふっくらしています。当店が商標登録した黄金アジフライは、主に房総半島の根付きアジの中から私が独自に認めたものを黄金アジとして提供します」と店長・長田宗伸さん。 目当ての黄金アジフライを見て、その大きさにビックリ。この日は15センチ以上の半身を丸ごと揚げていた。すぐにかぶり付くと、ふわふわの身からハンバーグの肉汁のごとくうまみの詰まった汁があふれ出して、またまた驚いた。幸先の良いスタートで、この先も期待できそうだ。
極上サバの刺し身を安全に提供
勝浦市の「外房つりキンメ鯛」、九十九里町のハマグリ、いすみ市のマダコなど、数々の誘惑に後ろ髪を引かれながら、ようやく房総半島の東端に位置する銚子漁港に着いた。 銚子漁港は三つの卸売市場を備えた巨大な漁港で、年間水揚げ量は2022年まで12年連続日本一だった。銚子漁港を代表するサバの旬は10月から翌2月まで。1尾700グラム以上の大物は100匹に1匹しかとれない貴重なもので“極上サバ”と呼ばれる。 銚子漁港から5分ほど歩いた丼屋七兵衛で、極上さばの漬け丼定食をいただく。しょうゆダレを絡めたサバは刺し身! サバは寄生虫アニサキスが潜むことがあり、生食は危険だったはずだが……。 「マイナス60度の冷凍庫で24時間以上冷凍し、アニサキスを死滅させていますから心配は無用です。冷凍前に特許製法の塩ダレに漬けることがポイントで、独特の臭みを抑え、刺し身の状態で提供できます」 店主の清水俊和さんは自信に満ちた笑顔を浮かべながら教えてくれた。いざ、実食。刺し身だけを食べると皮に近い部分はコリッと歯応えがあり、腹の部分は大トロのようにとろけていく。おいしい! 大声で感想をもらすと、清水さんは“そうでしょ”とばかりに微笑んだ。 文/内田 晃 写真/青谷 慶 金谷食堂 営業:10時30分~18時30分(土・日曜、祝日は~19時30分)/無休 交通:内房線浜金谷駅から徒歩10分/富津館山道路富津金谷ICから国道127号経由2キロ 住所:千葉県富津市金谷2152-1 電話:0439・69・8885 丼屋 七兵衛 営業:10時~16時30分/水・木曜(祝日の場合は翌日)休 交通:銚子電鉄観音駅から徒歩6分/東関東道佐原香取ICから国道356号経由37キロ 住所:千葉県銚子市飯沼町1-26 電話:0479・25・3133 ※「旅行読売」2024年3月号の特集「港町食堂」より