「2024年問題」で加速、ファンドが仕掛ける物流再編、物流マッチングの老舗が上場廃止を選んだ事情
■荷物量が少ない中、改革に苦戦 厳しい環境下で、トランコムは精力的に投資を進めている最中でもあった。物流センター運営事業では、自動車部品、日用品、菓子、加工食品など、業界ごとに複数社を集め、共同配送する取り組みを進めている。各地にセンターを構え、システムも統一し、より効率的で高度な配送を構築する狙いがある。 さらにはASEANを軸とした海外展開の加速、人材育成、DXの推進などについても投資が必要だった。
ただし、改革には多額の初期投資が必要となる。収益やキャッシュフローにマイナス影響が生じる可能性が高く、株価の下落リスクもある。そこで2023年9月頃から非公開化を実施して抜本的な改革を進めるべく、検討を重ねてきたという。 トランコムは今年2月から5月下旬にかけて、複数のプライベートエクイティファンドと接触。その中で日本で豊富な実績やノウハウがあり、十分なサポートが得られるとの理由から、株式30.7%を保有する武部篤紀会長などの創業家とベインキャピタルが組む形でMBOが決まったという流れだ。
トランコムは業界でもユニークなビジネスモデルの会社だ。マッチング事業では「アジャスター」と呼ばれる社員たちが日々、人力でマッチングを行っている。全国51のセンターに約600人のアジャスターが在籍。荷主と運送会社の間に立ち、荷物情報と空きトラックの情報をマッチングしている。 全国1万3000社の運送会社と連携し、1日あたりの成約件数は約6000件。A地点からB地点へ運ぶシンプルな輸送だけでなく、複数の荷主の荷物を積む「混載」を工夫したり、リレー形式の輸送も組み立てたりする。
■問われる出口戦略 今年に入り物流業界では、TOBによる買収合戦、創業家によるMBOや事業譲渡など再編の動きが活発化している。 ベインは国内で物流企業への投資実績は乏しい。何年後にイグジットするのか、出口戦略なども現時点では明らかにしていない。トランコム独自の強みを保ちながら構造改革を進め、明確な再成長の見通しを立てられるかが、今後のポイントになりそうだ。
田邉 佳介 :東洋経済 記者