indigo la End、追い風が続く4人の現在地 ライブの一年とフジロック、次回作の展望を語る
新曲「心変わり」と次回作の展望
―ツアーの終盤で新曲の「心変わり」が披露されて、配信リリースされました。今はアルバムを作っているという話だったので、その中からこの曲を選んだ? 川谷:そんな感じですね。次のアルバムをどんな感じにするかはまだあんまり考えてなかったですけど、「心変わり」っていうテーマではずっと作りたくて、『哀愁演劇』よりもっと前から考えてはいたので、次のアルバムに向けた一発目はこれがいいなって。インディゴの落ち着いてる感じと、ちょっと大人な感じと、おしゃれさと、その中にちゃんとキャッチーさもあって……「名前は片想い」以降の「ちょっと外に出て行こう」みたいな考え方は変わってないんですけど、ウケるかどうかを狙って作るのはやめようかなって。 ー「名前は片想い」にしろ「心変わり」にしろ、やはり一発でキャッチーだなと思わせる力があると思います。 川谷:「名前は片想い」はTikTokで使いやすかったのもあって、今第2のバズが起きてるんですよ。1曲で2回山が起きることってあんまりないらしいですけど、前バズったときより今の投稿数の方が多いんです。落ちサビのダッダッダッダっていうリズムに合わせてカメラを動かして撮るのが流行ってるみたいなんですよね。乃紫ちゃんの「全方向美少女」とか、クリープハイプの「イノチミジカシコイセヨオトメ」もそうですけど、ああいうのを見てると何となくどういうのがTikTokで受けるのかわかってきて。 でもそういう意味でのキャッチ―さとはまた別のものを作るためにめちゃくちゃ試行錯誤して、「心変わり」は作りました。だからまだこれが正解なのかはわからないけど、こういうミドルテンポの曲のほうが俺の得意とするところではあるし、4人とも「名前は片想い」のときみたいに無理はしてないというか。「名前は片想い」のときは僕以外、最初は懐疑的だったと思うので。 ―初披露が日本武道(2022年11月)のラストだったから、「ここでこれでいいのか?」みたいな話はありましたよね。 川谷:「心変わり」はそういう恥ずかしさもないっていうか……恥ずかしさがないのがいいことなのかどうかもわかんないですけどね。もう35歳なので、売れてるものがむずがゆく思えることも多いけど、『哀愁演劇』まではそこにアジャストするために、むずがゆいものも作っていかないといけないのかなと思った一年だったんです。でも結局「無理にそれをしなくても」と思ったから、「心変わり」はまた新たな試行錯誤の一曲目。今はすでにこれ以降の曲もいろいろ作ってて、今のところいい具合にはなってる気がするんです。『哀愁演劇』はちょっと地味な曲が多かったというか、オルタナティブで、ライブで映える曲も多くて、僕らにとってはキャッチーだけど、ちょっととっつきにくいと思う人もいたかもしれなくて。 ―それこそ「名前は片想い」でインディゴを知ったような子たちからするとね。 川谷:最近若いバンドマンから「初めて買ったCDがインディゴです」とか言われるようになって、しかもそれが『さようなら、素晴らしい世界』(2012年)とか『夜に魔法をかけられて』(2013年)だったりして、「そこなんだ?」っていう。僕、あのへんの作品はアレンジがあんまり気に入ってないというか、良い曲は入ってるんですけど、完成度はそんなに高いとは思ってなくて。でも「それ好きなんだ」みたいなのが最近増えてきたから、その頃の要素もあって、かつ今の要素もあって、キャッチーな要素もあるっていうのが共存できればいいのかなって。昔の曲がちょっと恥ずかしいのは音質のせいも大きいから、今ちゃんと録ったらかっこいいんじゃないかっていうのも含めて、すごく総合的に作ってる感じ。『哀愁演劇』のときは作りながらだんだんキャッチーじゃなくなってることに途中で気づいて、「これでいいのかな?」っていうのがあったけど、今回はそれが今のところないから、ちゃんとキャッチーに作れてるのかなって。 ―「心変わり」のアレンジはどのように作っていったのでしょうか? 長田:ジョン・メイヤーの「Neon」みたいなことがやりたくて、だからああいうイントロになったんです。サビのフレーズはキャッチーさを意識しつつ、開放弦を禁止にしてみたり、挑戦はいろいろしてますね。 後鳥:シンプルそうに見えてコードはすごく複雑なんですけど、でもそれをあんまり意識させないようにして、サビとかすごくきれいになったんじゃないかなって。音数が少なくて、不安になっちゃうところもあるにはありますけど。 ―でもそれを過不足なくキャッチーに聴かせられるのがインディゴならではの部分ですよね。この路線は「邦画」くらいから始まってる印象で、「名前は片想い」「心変わり」とどんどん洗練されて行ってる印象なのですが、栄太郎くんはどう思いますか? 栄太郎:「邦画」のときはまだフィルのパレットみたいなのが多ければ多いほどいいと思ってたんですけど、「名前は片想い」のときにABBAとかメトロノミーみたいなネオヴィンテージのリズム、頭打ちの方向性でいったときに、フィルのパレットはそんなに多くない方がいいのかなっていうのがふわっとあったんです。で、「心変わり」はフィルの種類を3つだけにしたんですよ。細かい変化はいろいろあるけど、一応3種類がずっと決められたところで鳴るみたいな感じにしていて。そうしたら、昨日レシピ系のショート動画で「心変わり」がジングルとして機能的に使われてて、「なるほど!」と思って。曲の解釈をユーザーが教えてくれるみたいな、それはすごくアドレナリンが出る感じありますね。 ―歌詞に関しても聞くと、まず「心変わり」というタイトルを見て、パッと「瞳に映らない」の“行ったり来たりしないでよ 心変わりとか言って”を連想したんですけど……。 川谷:特に関係はないです。でもセットリストの中に一緒に入ってると、ファンの人が勝手にいろいろ思ったりするかもしれないと思って、最近のセットリストによく入れてます。「心変わり」はずっと歌詞にしたいテーマではあったんですけど、僕は「心変わり」っていうと「遊戯王」のカードが出てきちゃうんですよ。でも今回書きだしたらバーッと書けたので、自分の中で「遊戯王」から更新できました(笑)。サビの中の「旬」っていう言葉が出てきて使ったときに、「これはいい歌詞になるかも」と思って、あと冒頭の“出会いには嘘がある 別れには本当がある”が出てきたときに、全部ストーリーが繋がったんです。