名門MG 21年ぶりの2ドアオープンスポーツカー、MGサイバースター登場!
3グレードで700万円弱からの設定
21年ぶりとなる新たなMGの2ドアスポーツカーは全長4533 mm x全幅1912 mm x全高1328 mm、ホイールベースは2689 mmと、非常にボリューミーなボディを持つ。また、バッテリーを搭載していることもあってか車両重量は2トンを超え、2075~2210 kgとなる。 グレードはモーターやバッテリーの違いで大きく分けて3種類用意される。駆動方式は後輪駆動のシングルモーターと四輪駆動のツインモーターとなるが、前者は制御によって出力が310 hpと335 hpに分けられている。ツインモーターのグレードは前201 hp・後335 hpの構成で合計出力536 hp、最大トルク725 Nm、0-100 km/h加速は3.2秒をたたき出す。駆動用バッテリーはグレード共通で「CATL(寧徳時代)」の三元系リチウムイオン電池を採用、容量64 kWhと77 kWhが用意される。77 kWhバッテリーを搭載する四輪駆動の最上級グレードでは一回の充電で520 km(CLTC方式)を走行可能と案内している。 全体的なフォルムの比率はMG F以降のミッドシップレイアウトのような雰囲気を醸し出しており、BEVらしくノーズが極端に短くもなく、典型的なスーパーカーのように過度に長くもない。一方で「スポーツカー」らしさを演出することに躍起になりすぎて、ボディには流線的なラインが多すぎる印象も受ける。赤ラインが入ったフロントリップやサイドステップ、リヤのディフューザーはオプションではなく標準装備なのだが、これに関しては装着されていない状態を標準とし、あとから装着するか否かを選択できるようにした方が良かったのではないかと感じた。純粋な走りを楽しむためのシンプルなスタイルも合わせて用意することで、より紳士らしいブリティッシュスポーツに近づけるだろう。 ドアは電動シザードアを採用しており、乗り込む際はドア上部、降りる際はドア内側かキャビン中心にあるボタンを押して操作する。ドア自体が結構な大きさであるのも相まって、跳ね上がる様子はなかなか迫力のある光景である。 全幅はほぼ2メートルの車体だが、実際に座り込むとそのコックピットは良い意味で狭く作られている。運転席と助手席の間はセンタートンネルで区切られており、またダッシュボードのレイアウト、インフォテインメントやエアコンの操作ボタンもすべて運転席の方向に配置されている。 ハンドル奥の10.25インチディスプレイがメーターとしての役割を果たし、その左右にも一枚ずつ角度をつけてディスプレイが配置されている。左側のディスプレイでは運転に必要なテレメトリーや詳細設定、右側ではナビゲーションや再生中のメディア情報、その他アプリなどを起動できる。ダッシュボードのデッキ部分にはエアコン操作用の物理ボタンがあるほか、その真下にも縦長のディスプレイが設置されている。こちらのディスプレイでもエアコンや充電設定が操作可能で、設置位置的にもより自然な手の動きで動かせると感じた。電動ルーフと電動ドアの操作ボタンもその周辺にまとめられている。 走り出すと、モーターの制御は意外とマイルドであることに気がついた。スポーツモードにすると爆発的な加速を得られるが、低いアイポイントとキャビンの密集感も相まってか、酔うような感じではない。最近、続々とリリースされる中国ブランドのBEVはこの辺りの設計がどこも下手なため、純粋に気持ちの良いこの感覚には驚かされた。 コーナーで曲がる際にちょっとアクセルを煽っても、非常に安定している。さらには直進路で踏み込んでみると、その伸びやかな加速がクセになるのだ。一方でボディは2トン超、ところどころの挙動で重さを感じる瞬間もあった。パワーは十分な一方、どうしてもボディの重さをモーターの力で押し殺している印象だ。これに加え、脚周りはスポーツ性よりも快適性を重視しており、スポーツカーらしい硬さではない。路面の凹凸は気にならないが、スプリングのレートが柔らかいのか一度衝撃を吸収するとすぐには揺れがおさまらない感覚もある。 サイバースターは中国で31.98万元(邦貨換算:約684.5万円)から36.58万元(約782.8万円)で販売されている。とても運転が楽しいのは事実なのだが、中国の消費者からの反応はイマイチで、2024年3月の販売台数は109台にとどまった。対して、MGの母国・イギリスでは2024年4月下旬より販売を開始、価格は5万4995ポンド(邦貨換算:約1083.2万円)からだ。かなり強気な値段設定に思えるが市場では純電動の2ドアオープンがまだまだ少ないこともあり、注目度は高いだろう。
加藤 ヒロト