青空の下、ガンジスを眺めながらが気持ちいい?進まないバイオトイレの普及
変わらぬ習慣
モディ首相のガンジス川清掃計画の一環として、川沿いの村々に公共トイレが設置されることになった。インドでは今でも、特に下水設備の整わない田舎部では屋外排泄が普通である。森の中や浜辺、それにレールの上に足をかけてまたぎやすいので、線路も排便の人気スポット。そんな土地でうっかり浜辺に足を踏み入れ、散乱する人糞の地雷に出食わしたことも数知れずだ。 ガンジス川流域の村や町も例外ではない。何百、何千万という人々が毎日、川で用をたすのだから、これが汚染にならぬ訳はない。村人たちにトイレを使わせることによって汚染を軽減するのが目的だが、その試験的場所になったジャルカンド州の村を訪れた。 ガンジス川面から20メートルほど丘を上がったところにある村の一角、納屋の横に簡易式のバイオトイレが建てられていた。微生物の働きによって便を分解し、処理後は堆肥として畑でも使用できる。しかし、トイレはほとんど村人たちに使われていないという。インドでは通常、紙で尻を拭かずに水で洗い流すが、川から水をくみ上げるポンプ設備がないというのだ。それは建前で、長年の習慣を変えられない、というのが本音だろう。他人と共有の狭いトイレより、青空の下でガンジスを見ながらしゃがんだ方が気持ちいいに決まっている。 人々の思考や習慣の変えることなしには、設備投資も意味がないというわけだ。 (2016年1月撮影)