全財産1億2千万円を市に寄付 遺言で「農業振興や伝統工芸事業に役立てて」 埼玉・和光市 昨年亡くなった元教師の96歳男性
「財産の全てを市に寄付し、農業振興や伝統工芸事業に役立ててほしい」―。こんな遺言書を残して死去した埼玉県の和光市民が、全財産約1億2千万円を同市に寄付した。市は「農業振興や文化財保護、国指定の午王山遺跡などの事業に活用したい」として、2024年度一般会計補正予算案で「まちづくり基金」の積み立て金として計上、9月議会に上程した。 1番の「1万円札」寄贈 福岡の男性から深谷市に 偶然、両替で入手したお札 市が入手を熱望していること知り、寄贈
市に全財産を寄付したのは、23年10月に老衰で亡くなった96歳の男性。 市によると、男性は元教師で市内の団地に夫婦で暮らしていた。退職後は市の民生委員などを務めていたが、19年に妻が他界。翌20年から高齢者向け住宅に入居していた。子どもがなかったことなどから、生前、後見人を通じて財産整理を依頼。同年12月に遺言書を作成していた。 この間、男性は「農業振興などに役立ててほしい」として、市に1千万円を寄付しており、市は16年度に篤志功労で男性を表彰している。23年11月、男性が資産管理を委託していた金融機関から市に対して寄付の申し出があり、基金への積み立ての準備を進めていた。 後見人によると、墓じまいしていたことから、男性の遺骨は本人の希望により、東京湾に散骨されたという。