3000ドルの借金抱えさせ強制労働も… 日本企業のサプライチェーンも関わる人権侵害の対策に国際NGOが法整備訴える
シマノ側、HRNの連絡受け是正措置を実施
こうした問題を察知したアンディ氏はKLIとコミュニケーションを取るも、状況の改善にはいたらず、HRNを介してシマノ側とのやりとりを実施。 結果として、シマノ側でも調査が行われ、KLIで働く移民労働者に対し、斡旋料・手数料を返金するなど、是正措置が取られた。
企業努力のみでは対応困難「日本国内で法整備を」
移民問題は国も絡んでおいることなどもあり、アンディ氏は「このようなケースにおいて、個別事案の対応だけでサプライチェーンにおける労働者の権利侵害に対する大きな変革をもたらす限界を露呈している」とし、サプライチェーンの下流(輸入国)である日本の、国としての対応が必要だと主張する。 シマノの事例では現在働いている移民労働者への手数料の返金が実現した一方、労働者からの苦情があったにもかかわらず、HRNからのコンタクトがあるまで、対応に遅れがあった。また、過去に働いていた労働者への補償など、課題は残っている。 しかし、輸出国(生産国)や、移民労働者の出身国での構造的な問題が関わることから、企業努力のみで、労働者を保護するのは難しい。 そこで、HRNのアドボカシーオフィサー、ケイド・モスリー氏は、日本のような国が、強制労働によって製造された製品の輸入を禁止することが、有効な手段ではないかと訴える。 「日本は経済的に影響力を持っており、自国内では強制労働を禁止していることから、労働者を保護する基礎があるといえます。ただ、強制労働で作られた製品の輸入を禁止するという法律はありません。 海外では、すでにアメリカの米国法第307条や、ウイグル強制労働防止法、EUの欧州強制労働規則などで、強制労働産品の輸入を禁止しており、今後も米国とEUの市場にアクセスするためには、日本国内でも法規制を検討する必要があります。 実際に、アメリカでは、新疆ウイグル自治区での強制労働との関連が疑われたことから、ユニクロの製品の輸入を差し止めたという事例もありました。 日本政府には、サプライチェーン内の強制労働を終わらせる責任があり、そのためにも法整備が有効なのではないでしょうか」
「身の回りの商品、強制労働で作られているかも」
HRNでは、今後この報告書をもとに各省庁とも議論をしていくとのことだ。 会見の最後に、HRNの事務局長・小川隆太郎弁護士はサプライチェーンでの強制労働の防止には、日本の消費者の意識を変えることも必要だと訴えた。 「海外の強制労働問題を見える化していく必要があると思います。普段身の回りにある輸入商品は、強制労働によって生産されているものかもしれません。ですが、現状ではそうした情報が消費者に届いていないので、この問題を広く伝えていくことも重要だと考えています」
弁護士JP編集部