ロッテ今江が語る、「下克上が18番!」
これまで2度のポストシーズン、日本シリーズでは、その気持ちの持ちようでプレーして、“ラッキーボーイ”とか“大舞台で強い男”と言われるほど結果をつながった。 目立ちたい精神が、力みになるとマイナスだが、僕の場合、それがプラスになる。短期決戦ゆえの集中力が生まれているのか、と自問すれば、そうでもない。僕には、集中力のない選手だという自覚がある。集中力がないので、どうしても周囲のガヤガヤしたものが気になってしまう性格だ。私生活においても、例えば、本を読んでいても雑音が気になるし、ひとつのことに入り込んで集中するというものがない。 それでも、ごくたまに後から振り返って「集中していたな」と思うシーンがある。スポーツにおいて、いわゆるZONE体験と言われるものだろう。 それが、あの2005年の日本シリーズでの8打席連続ヒット。ボールが、敷かれた電車のレールの上を走ってくるような1本の筋がハッキリと見えたのである。ポストシーズンで、そういう体験ができたので、僕にはポストシーズンが得意だと自信が植え付けられたのかもしれない。ちなみに、そのボールにレールが敷かれるような感覚を意識的に作ろうと、2006年以降、追い求めたが、それが原因で逆にスランプに陥って、バッティングが駄目になった時期があった。困ったことに、あの日本シリーズ以来、“夢のレール”は出てこないのだが(笑)……。
大きな舞台で、ガクガクと特別緊張するかと聞かれれば、それはない。なぜなら、僕は、大きな舞台でなくとも、毎日、緊張しながら試合に出場しているからだ。今回、足首を痛めて2軍の試合で調整することになったが、その2軍の試合でも緊張した。1軍復帰の最初の試合も、なおさら緊張感が強まった。僕は、常に緊張しておかないと、とんでもないプレーをしてしまうという欠陥がある。自分でそれがわかっている。楽天の田中将大投手は、今年「ここぞ!」というところで、力を入れるメリハリのピッチングで、開眼したように見えた。だが、僕の場合、そのメリハリをつけると、駄目になる。常に100パーセントの力を出して緊張しておかねば、力を発揮することのできないタイプ。そして、いつも緊張しているからこそ、CSや日本シリーズの緊張感も同じというメリットもある。