「古びた3輪ゴーカート」に58万円の値がついた理由とは? セールスポイントまさかの「詳細不明」 リア回りはMVアグスタの市販車を流用か!?
名門バイクブランドの市販車を流用した「詳細不明」のゴーカート
各オークションにおいて希に見かけるのが、イタリアのバイクブランドであるMVアグスタの2輪車用エンジンを搭載したゴーカートです。 【画像】「えっ!…」これが老舗オークションハウスで話題を呼んだワケありの3輪ゴーカートです(10枚)
それは、1950年代にトニー・カートというイタリアのゴーカートメーカーが、MVアグスタのバイク用エンジンを流用して製作したもの。MVアグスタが正式に認めた公認商品ではなく、トニー・カートがMVアグスタの市販バイクを購入し、わざわざ“改造”してつくったゴーカート、というのがその正体のようです。 MVアグスタの前身は航空機メーカー。1907年、シチリアの貴族であるジョヴァンニ・アグスタ伯爵が、パレルモに設立したジョヴァンニ・アグスタ航空会社が起源です。設立当初は他社製の航空機の整備をおこなっていましたが、第一次世界大戦が勃発すると独自に航空機の生産を開始。イタリアの航空業界でそれなりの存在感を示すまでに成長しました。 そんなジョバンニ・アグスタ航空機会社がオートバイ事業に進出せざるを得なかったのは、第二次世界大戦後の連合国による航空機製造禁止令です。そこで1945年、同社はオートバイ事業に進出し、MV(メカニカ・ヴェルゲーラ)アグスタ社を創立。後に、オートバイの性能をアピールするためにレース部門を創設し、目覚ましい活躍を見せます。 そんなMVアグスタのバイクを流用したワケありの3輪ゴーカートが、先頃、ボナムズのオークションに登場して話題となりました。 ボナムズによると、この3輪ゴーカートは「詳細不明」とのことですが、こうしたワケありであることを全面的にうたった出品物が、ボナムズほどの老舗オークションハウスに登場するのは非常に珍しいことです。 通常は、由緒正しいものが出品される場ではありますが、ボナムズが取り扱うほど「この3輪ゴーカートは面白い」ということなのでしょう。 ●リアの部分はMVアグスタの市販車のまま トニー・カートが手がけるのは、一般的にMVアグスタのバイク用エンジンを独自に流用した4輪ゴーカートで、エンジンや燃料タンクの配置を“再構築”しています。 一方、今回、ボナムズに出品された謎のゴーカートは3輪。しかも、そのリア回りは“簡易的”に仕立てられているのです。よく見ると、バイクの燃料タンクから後ろ側の部分、エンジンや駆動チェーン、駆動輪などがバイクの状態のままであることが分かります。 125ccのMVアグスタ製2ストロークエンジンを搭載するこの3輪ゴーカート、ペダル配置が戦前のクラシックカーのようで、ちょっとユニークな構成となっているのもポイントです。 右側のペダルがクラッチで真ん中がリアブレーキ、そして左側のペダルがアクセルとなっており、どうやらフロントブレーキはついていないようです。このゴーカートをサーキットで走らせるのは、相当スリリングでしょうね。 そんなMVアグスタのバイクを流用したちょっと珍しい3輪ゴーカート、「詳細不明」ではありましたが、MVアグスタの1950年式モデルを流用していることもあり、3450ユーロ(約58万円)で落札されました。ヒストリーも現状も不明というワケありのアイテムながら、よく落札されたものです。 走らせるために購入したというよりも、オブジェとして購入したのでしょうか?……。もしそうであれば、落札者はきっと優雅な方なのでしょうね。
古賀貴司(自動車王国)