<解説>小野憲史のゲーム時評 「ポケットモンスターを遊びつくす本」がもたらしたもの
ただ、それらで「遊びつくす本」のかわりが埋まるわけもなく、キャッシュフローは悪化していった。出版業界の勉強会で「出版社を潰すのは、売れない本ではなく売れた本、特にうっかりベストセラーが出た後は要注意」という話を聞いたとき、深く納得したものだ。本社が再移転してフロアが狭くなり、質より量の出版計画が続き、残業代や各種手当がカットされ、社員やアルバイトの退職が続いた。
ちなみに一度傾きかけたグループの経営も、まったく新しいところからヒットが出て、復活する。それが「二次元ドリームノベルズ」をはじめとしたシリーズだ。そこからレーベルが生まれ、雑誌になり、マンガになり、関連商品につながった。やがて「GCノベルズ」が立ち上がり、「転生したらスライムだった件」が出版され、現在に至る。いずれも自分が退社してからの話だ。ヒットは水ものと言われるが、ヒットを生み出す社風や環境には傾向があり、さまざまな研究がある。それが何かを考えることも、今の自分の仕事につながっているように思われる。
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おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーランスで活躍。2011からNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)の中核メンバー、2020年から東京国際工科専門職大学講師として人材育成に尽力している。