<解説>小野憲史のゲーム時評 「ポケットモンスターを遊びつくす本」がもたらしたもの
ところが、書店に並ぶや否や飛ぶように売れ、増刷に次ぐ増刷が続いた。ゲーム「ポケモン」の完成度もさることながら、競合の攻略本が少なかったことや、ディープな編集方針が功を奏した。
しかし、良いことばかりは続かない。「ポケモン」のアニメ化を機に株式会社ポケモンが設立され、権利が集約化された。そのあおりを受けて、攻略本のシリーズ展開ができなくなった。ブームの最中に刊行が途絶えた背景には、そうした大人の事情があった。
ちなみに、本シリーズの編集・制作に自分はタッチしていない。「ゲーム批評」の編集が忙しく、それどころではなかったからだ。ところがこれ以降、自分の人生に間接的にかかわってくることになる。
攻略本のヒットでグループの財政が潤った。本社が移転し、フロアが広くなり、ネットワーク環境が整備された。一方で次第に攻略本の流通在庫が返品されてきた。仮に部数が100万部の場合、返本率が1%でも、1万部が返品されることになる。この時、返品による損益と同じくらいか、それを上回る新刊の出版が続けば、問題はない。しかし、そんなに簡単にベストセラーが出せれば苦労はしない。初めは景気よく、そして次第に追い詰められるように、さまざまな書籍や雑誌が企画され、その多くが失敗していった。
1997年9月に攻略本「ディアブロ・アート・ガイド・ブック」が出版されたのも、そうした背景があったはずだ。当時、PCオンラインゲームとして異例のヒットを記録したRPG「ディアブロ」のサポート本として企画された。1999年5月にはPS1で発売されたアクションゲーム「仮面ライダー」にあわせて、「仮面ライダーメイキング」が出版された。筆者も「ゲーム批評」にくわえて、徹夜で「ディアブロ」を攻略したり、一文字隼人/仮面ライダー2号役を演じた俳優の佐々木剛さんをインタビューするため、ご自宅まで伺ったりと、これまでとは違う仕事が続いた。