<ラグビーW杯>毒魚に刺された“二刀流”山田のトライでサモアを撃破!
南アフリカ代表戦(9月19日/ブライトンコミュニティースタジアム)を34-32で制した翌日、山田は災難に見舞われていた。チームでリカバリーに出かけた海で「ウィーバーフィッシュ」という毒魚のヒレに刺され、左足薬指の患部を切り開いた。一時離脱を余儀なくされていた。 「皆で行って、僕だけ。運がいいのか悪いのか…」 時間が経たぬうち、前を向いた。 「気持ちの切り替えは得意な方なので、次の試合に…と集中できました」 チームの選考方針と相まって、10-45で落としたスコットランド代表戦(23日/グロスター・キングスホルムスタジアム)はスタンドで見届けた。終盤に突き放された仲間を観て、「ちょっと、コミュニケーションが途切れちゃったかな」と感じた。9月28日から練習に復帰し、「コンディションが100パーセントなら、みんなとうまくコミュニケーションを取れる自信はある」と宣言。「コミュニケーション」からサモア代表戦の好機演出とトライを導いたのは、自然な流れでもあった。 後半16分に頭を強く打って退場。勝利の瞬間は医務室にいたが、試合後の取材エリアには整髪料をつけて登場。脳震盪の疑いもあり次戦への出場可否は流動的も、「僕的には、大丈夫ですけど」。ちなみに、これまでのイメージを一新するような風貌に変身していたが、試合直前に仲間同士で現地の美容室へ行ったら、無料で散髪してもらえたようだ。 ただ、目標の8強入り(各プール上位2チーム以内)に向け厳しい状況下にある。4トライ以上で得られるボーナスポイントが得られず、ここまで2勝1敗で勝ち点は8。11日のアメリカ代表戦(グロスター)で4トライ以上を挙げて白星を得たとしても勝ち点は13止まりとなる。南アフリカがスコットランドに勝ったため、勝ち点11で暫定首位、スコットランドが勝ち点10で暫定2位。いずれもアメリカ、サモア戦を1試合ずつ残すのみで、どちらがのチームが足を救われない限り、ジャパンとしては、自力での8強入りは叶わない。 しかしいまのチームは、勝ち点の計算より一戦必勝の趣を重視する。五郎丸副将の言葉を借りれば、「我々はチャレンジャー。それ(勝ち点の計算)を考えられる立場にない」。勝ったエディー・ジョーンズHCも言い切る。 「24年間勝っていない日本代表が2勝した。もう、歴史は塗り替えた。次のアメリカ代表戦で、最もいい試合をする」 山田も同じ気持ちだろう。学生時代から注目されながらも、初代表が28歳。そうした回り道の間の口癖を、また、心で誓うはずだ。 「自分でコントロールできないことは、コントロールできないので。自分でコントロールできることに、集中します」 (文責・向風見也/スポーツライター)