<ラグビーW杯>毒魚に刺された“二刀流”山田のトライでサモアを撃破!
今大会で成果を示す鋭いディフェンスも、健在だった。1人目が相手の足元へ、2人目がその相手の上半身へそれぞれ刺さる。すぐに立ち上がり、次の守備へ備える…。スタンドオフのトゥシ・ピシ、フルバックのティム・ナナイウィリアムズといったキーマンの走路を、ほぼ封鎖した。スタンドオフの小野晃征も満足げだった。 「相手のテンポをコントロールする選手を常に2人がかりでマークするようにした。時間を与えない、スピードを乗らせない、と。キーマンを注意して、その周りの選手にもうまく対応できたと思います」 さらにチームは試合を担当するクレイグ・ジュベールレフリーを「アタックが有利な笛を吹く」と見抜き、球を持てば自陣からでもランとパスを多用する。ここ4年間のコンセプト、「JAPAN WAY」なる攻撃姿勢を貫いた。時折できる相手守備網の凸凹に、リーチ主将が、司令塔の小野が、突破役であるセンターのマレ・サウが突っかけた。敗れたスティーブン・ベサムヘッドコーチ(HC)が「規律を失った」と嘆くサモア代表勢は、相次ぎ接点で反則を取られた。 攻めを重ねるなか、キックも効果的に使った。ジャパン側から見て右側、つまりはサモア代表の大型左ウイング、ツイランギの背後へ蹴り込んだ。その策を有効活用したスクラムハーフの田中史朗によればこうだ。 「ツイランギが、まぁ、あまり(後方を)カバーできない。(隣の)ナナイウィリアムズにボールを渡さないなかで、ツイランギの裏を狙う…と意識していました」 わかりやすい例は、前半3分頃に早くも訪れた。グラウンド中盤右中間で球をもらったフッカーの堀江が、持ち前の器用さを活かして低い弾道のキックを放つ。 それを追走したのが、山田だった。ツイランギが追いつけない無人のスペースを真っ直ぐ駆ける。慌ててカバーに入ったナナイウィリアムズを、その勢いでタッチラインの外へ出した。 「あそこは、お互いコミュニケーションを取れたプレーだと思いますね。田中選手、堀江選手から、あそこ(ツイランギの背後)は狙って行こうという話がありました。相手が大きい分、クイックに…と考えてました」 事前にゲームの主力格の意図を共有するという「コミュニケーション」と、試合中の味方の思惑を言外に察知するという「コミュニケーション」…。有形無形の「コミュニケーション」が、その局面を生んだという。 結局、直後のジャパンボールラインアウトはミスに終わるも、蹴り返されたボールを受け取った山田が、カウンターアタックを仕掛ける。1人、2人と相手をかわす。22メートルエリアへ走った。ジャパン、攻撃を重ねる。サモア、接点で反則を犯す。8分、五郎丸副将の先制ペナルティーゴールが決まった。