自動車工場に「新しい風」 19歳の女性整備士誕生 喜界町・久保奈々さん
鹿児島県喜界町湾の前底自動車整備工場(前底浩喜代表取締役社長)に勤める久保奈々さん(19)がこのほど、3級自動車ガソリン・エンジン整備士の試験に合格し、喜界島で唯一の女性自動車整備士が誕生した。1968年創業の同社でも初めての女性整備士。前底将太専務は「新しい風」と期待を寄せる。 ■3・2%の女性整備士 同町荒木で生まれ育った久保さん。農機具などさまざまな修理をこなす父を見て育ち、自身も「壊れたものを直すことが好き」になったという。喜界中学校卒業後、15歳で入社。「車のことは何も分からなかったけれど、修理に興味があって。技術を早く身に付けたいと思っていたので、進学するか就職するかの迷いはなかったです」と笑顔で話す。入社後は車検整備を手伝い、基礎を学んだ。 18歳になり、普通自動車の免許を取得。今年2月、奄美大島に約1カ月滞在し鹿児島県自動車整備振興会大島分教所の2種養成施設で講習を受けた。筆記試験にも合格し、4月に3級自動車整備士の資格を得た。 2023年度の自動車特定整備業実態調査によると、全国の整備士数は33万1255人。うち女性は1万481人と、全整備士数に占める女性の割合はわずか3・2%。奄美大島自動車整備振興会によると群島内の女性整備士は10人未満で、専門学校に通わず現場で技術を身に付け、資格を得ることもまれという。 ■新しい風 「島の整備士は40~50代中心。このままではいけないと感じていた」と話す前底専務。久保さんの存在は「会社の空気を変えてくれた」という。「対処に悩んだときは2人の先輩に質問し、どちらの答えがよいか自分で考えられる力がある。他の社員にも刺激となり、いい関係を築いている。責任感を忘れず、従業員を引っ張る存在になってほしい」と期待する。 久保さんも「社会のことを何もわかっていなかった自分に、みんながなんでも教えてくれた。誰かにまず聞くのではなく、どうしたらいいのか自分で考えられるようになった」と振り返る。男性が多い業界でも「女性だから、という理由でやりにくいと思ったことは何もない。車を触ることも、直すことも両方楽しい」とやりがいを語る。 同級生や友人の多くが進学や就職で故郷を離れたが、久保さんは「島が好きです」と笑う。今後は実務経験を重ね、2級自動車整備士や国家資格である自動車検査員の取得を目指す。 進路に悩む同世代や後輩へのメッセージを尋ねると、少し照れた表情で答えた。「やりたいことがあるなら、悩まずに。まずは動いてみたらいいと思います」
奄美の南海日日新聞