「魚が獲れないのは世界で日本だけ」”子どもの魚”まで食べ尽くす日本人…スーパーの刺身や回転寿司が消えゆく「最大の理由」
日本人は魚を獲り過ぎてきた
漁獲量の低迷を招いている最大の原因とされるのが、シンプルに“魚の獲り過ぎ”であるということだ。 魚介類は天然資源である以上、乱獲が進めば資源量は急速に減り、漁獲量も減ってしまう。そのため、多くの先進国では政府が資源管理のための漁獲規制をしている。ところが、日本は最近まで規制に本腰を入れてこなかった。 漁獲規制は政治問題であるがゆえ、背景にはさまざまな問題が指摘されているが、十分に成長していない未成魚――いわば「子どもの魚」の流通を受け入れてきたマーケットの存在は大きいと考えられる。
クロマグロの90%以上は「子ども」
乱獲が進めば資源量が減るため、未成魚も獲らざるを得なくなる。太平洋クロマグロ(本マグロ)を例にとると、日本では漁獲量の90%以上を未成魚が占めている(2011年~2020年の平均)。十分に成長したマグロはほとんど獲れていないのが実情だ。 当然、未成魚のマグロは脂のりも悪く、商品価値は相対的に低い。だが、そんな未成魚のマグロであってもスーパーの鮮魚売り場や回転寿司などで普通に流通し、消費者に買い求められてきた。「こどもの魚を獲るなんてけしからん」とお思いの方は多いと思うが、未成魚を求めるマーケットが確かに存在しているのだ。 なお、日本でも1997年に、主要な魚種について年間の漁獲可能量を設定する制度は創設されている。しかし、この制度の対象となっている魚種はわずか8種ほどで、実質的な規制になっていないと批判されてきた。その結果、2000年代に入ってからも日本における漁獲量は下降の一途をたどり続けた。
ノルウェーの教訓
しっかりとした漁獲規制をかければ水産資源量が回復することは、各国で証明されている。なかでも、規制を強化し漁業の復活に成功した事例として最も有名なのが、前編で触れたノルウェーだ。 ノルウェーでは60年代以降、潤沢な漁業補助金を背景に漁船の性能が向上し、漁獲量が大きく増加した。その結果、70年代後半になると主要魚種である北海ニシンやタラなどの資源量が急速に減少したため、ノルウェー政府は漁業改革に着手。資源量の減少が著しい魚種については一時的な禁漁措置をとり、過剰な漁獲能力の向上につながる補助金も段階的に廃止した。 こうした漁業改革のなかでも特に重要な役割を果たしたとされるのが、一定期間内で漁獲可能な量を、漁船や漁業者ごとに割り振る制度の導入だ。 漁獲可能な量の上限が決まっていれば、漁業者としてはなるべく単価の高い魚を獲ることが経済的に合理性のある選択となる。そうなれば、単価の低い未成魚(子魚)などを獲ることが自然と回避され、将来的な資源量にダメージを与えずに済むことになる。 その結果、ノルウェーでは規制が強化されて以降、漁獲量はもちろんのこと、漁業生産額(漁獲高)も大きく増加した。単価の高い成魚(親魚)を狙うことにインセンティブを持たせ、水産資源の保護を目指した制度設計の効果がてきめんに現れたのだ。
【関連記事】
- 【もっと読む】悲報「牛丼《うまい、安い、早い》はもうすぐ終わります」空前の牛肉高騰、10年で5割も値上げ…日本人を襲う「牛丼ショック」
- 【はじめから読む】世界的“SUSHIブーム”で日本人が魚を買えなくなっている…!「サーモン価格は10年で2.5倍」庶民の味方「回転寿司」に迫る危機
- 中国に「スシロー」が進出、12時間待ちの大行列…!なのに中国メディアは「完全無視」の「トンデモすぎる理由」
- 「ウナギ、なぜ安い?」いきなり急増「鰻の成瀬」に専門家が警告…安さの《カラクリ》と味の《落とし穴》
- 超円安時代に海外で「焼肉ライク」が大盛況!子どもでも楽しめる焼肉ランチの「驚愕のねだん」と、さらに成功を収めている「ファミレス」の名前…!