入湯できる国重要文化財「道後温泉本館」:日本最古の湯に癒やされ、皇室や文豪ゆかりの部屋を観賞
豪華な皇室専用浴室も公開
館内には「神の湯」「霊(たま)の湯」という2種類の浴場がある。どちらも1階にあるが、霊の湯は2階から男女別々の階段で出入りするので、初めての人は迷うかもしれない。
4棟を通路でつないだため、動線は複雑になっているのだ。また天井は低く、階段は急傾斜だが、それも古い建築物の面白さである。
歴史ある文化財を堪能するなら、上階の2つの広間と個室の休憩室から選んで、利用料込みの入浴券を購入しておこう。風呂上がりに貸し浴衣を着て、お茶のおもてなしでリラックス。
バックヤードだった3階の2部屋も、リニューアルを機に貸し切り休憩室となった。他の部屋や通路が接続せず、専用の階段で出入りするので、水入らずのだんらんにお薦めだ。
ぜひ見学(有料)したいのが、1899年完成の皇室専用棟「又新殿(ゆうしんでん)」。花こう岩のダイヤモンドと呼ばれる高級石材「庵治石(あじいし)」を使用した湯釜や、金色の障壁画で飾った休憩室など、豪華な造りに目を奪われる。
これまで入浴料は銭湯並みに抑えてきたが、物価高の影響に加え、一部を保存費用に充てるため、営業再開に合わせて1.5倍に引き上げた。その分、冷暖房を設置したり、シャンプーやボディーソープを備え付けたりと、サービス向上に努めている。
外国からの入湯客に期待
道後温泉には年間77万人が宿泊し、そのうち5万5000人が外国人客。本館は写真映えスポットとして人気で、外で記念撮影するツーリストも多いが、その割に館内ではほとんど見かけない。 外国人にとって裸になって見ず知らずの人と風呂に入るのは相当にハードルが高いようで、大浴場しかないと知ると、入浴せずに帰る人は少なくない。周辺の個室温泉付きホテルに泊まる人も多いのだろう。 一方で「深く日本文化に触れられた」と満足する外国人客もいるという。重要文化財で源泉掛け流しの湯に漬かる特別な日本文化体験、1人でも多くの訪日客に楽しんでもらいたい。
本館の近くには、市が運営する公衆浴場が他に2軒ある。