「洗濯物の香り」が香害に…鬱っぽさ・頭痛・吐き気など、"香りによる不調"に悩む声止まらず
"やさしい香り"が魅力の香り付き柔軟剤。洗濯の際に使う香りへの注目度は近年ますます高まっており、売り場にも消費者の希望に合わせて様々な商品がズラリと並ぶ。香水未満、柔軟剤以上の香りを楽しみたいという人のために、最近ではフレグランスブランドとコラボした香りづけ専用のビーズなども話題だ。 【写真】耳の詰まりにも注意…!春のアレルギー症状、放っておけない10の兆候 しかし同時に、"香害"というフレーズもよく耳にするようになった。2017年の夏に日本消費者連盟(東京)が「香害110番」という相談窓口を2日間限定で設けた際には、結果として想像をはるかに超える相談件数が集まったという。(ここでいう“香害”とは、公害になぞらえ、香りに関係する健康被害を指している。香水や芳香剤、そしてこのところ急増しているのが、洗剤や柔軟剤の香りによるもの) 日本消費者連盟のキャンペーンは2024年も引き続き行われており、「香害188(いやや)集中キャンペーン」と題し、2024年2月1日(木)~2月20日(火)にかけて行われた。
なぜ強い香りが体に影響を与える?
「最近、香りの強い洗剤や芳香剤がブームです。いい香りと思う方もいるのでしょうが、強い香りが刺激になり、体にさまざまな症状が出る方が少なくありません。そういう方の多くは、まさか洗剤、まさか柔軟剤と思わずに使い続けています。病院で受診しても原因がわからず、自律神経失調症やうつなど、ほかの診断をされてしまうこともあります。症状は人によってさまざまですが、頭痛、吐き気、咳、くしゃみ、かゆみ、イライラ、呼吸しにくい、下痢、気分の落ち込みなど、挙げたらキリがありませんね」と説明してくれたのは、香害を含めてさまざまな化学物質による身体トラブルを支援している化学物質過敏症支援センター代表の広田しのぶさんだ。 欧米では認知が広がり始めている「化学物質過敏症」だが、日本ではまだまだ認知度が低く、治療できる医療機関も限られているという。 「この薬を飲めば治る、この治療をすれば完治できるというものではないので、医療としてなかなか発展しないのが現状です。アメリカでは、化学物質と脳の関係をハーバード大学などが研究を進め、発達障害などに関係することがわかってきています」 なぜ強い香りが体に影響を与えてしまうのだろう? それは、嗅覚が脳に直結しているからだ。解剖学では鼻を“飛び出た脳”“露出した脳”と呼ぶ医師もいる。動物の多くがニオイで危険や獲物をキャッチするように、人間もニオイで多くの情報をキャッチする。香りによってリラックスできたり興奮したりするのも、脳に直結して作用するからだ。そんなデリケートな 部分に強い刺激を与えれば脳が敏感に反応し、体のさまざまな部分に過剰に警告を出してしまうのも当然である。 「いい香りを演出するあまり、さまざまな化学物質が使用され加工されているため、それらに反応してしまう人が少なくないわけです」 ある日突然不調を感じ、思い当たる原因がないようなら、香りを疑ってみてもいいかもしれない。最近ではオーガニックの洗剤や柔軟剤も登場しているので、試してみるのもひとつの手段だ。もちろんオーガニックに反応してしまう人もいるので、化学物質過敏症支援センターが発行している『安全な生活をするための食品・生活用品リスト』(www.cssc.jp)を参考にするのもいい。たかが香り、と思わずに、嗅覚からの情報には慎重を期すべきと心得ておきたい。
Harper's BAZAAR JP