ゴンドラ乗務員の単調な日々 セリフなし、でもおしゃべりな映画「ゴンドラ」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 【場面カットをみる】山田孝之、仲野太賀らが出演する映画「十一人の賊軍」 ◇ ■「ゴンドラ」 主な舞台は自然豊かな山の谷間をつなぐ古い2つのゴンドラ。そして主人公はゴンドラの乗務員、ニノとイヴァという2人の女性。セリフもない。こんなミニマムな設定なのに、冗舌なせりふよりも、もっと多くのことが伝わってくる。 ゴンドラで毎日、同じ場所を行ったり来たりを繰り返す単調な日々だ。しかも上司の駅長は、意地悪で短気で腹が立つことばかり。そんな中、2人は奇想天外な余興を次々と編み出し、意表を突く展開に目が離せなくなる。 セリフがない分、観客は常に登場人物たちの表情やしぐさから、彼らの心の内やその背景を想像しなければならない。そして字幕や吹き替えという第三者の手を介していない分、自分流に作品を解釈して鑑賞できるのが魅力だ。 ただ2人の女性の関係を単なる友情ではなく、性愛を絡めて描いている場面は、蛇足だったかもしれない。純粋な友情で結ばれた2人の関係の方が、より多くの人に受け入れられたのではないか。 監督・脚本はドイツ出身のファイト・ヘルマー。独・ジョージア合作。 1日から全国順次公開。1時間25分。(啓) ■「十一人の賊軍」 旧幕府軍と新政府軍による戊辰戦争(1868~69年)の最中、新発田藩の命運を握る任務に就きながらも、最後は藩の逆徒となる11人を描いた集団抗争時代劇。 山田孝之、仲野太賀の主役2人はもちろんだが、脇役のイカサマ博徒を飄々と演じた歌舞伎俳優、尾上右近の存在感が際立つ。監督の白石和彌も右近を評価していた。右近の祖父は、東映の任俠映画ブームを牽引した鶴田浩二。 ドラマ「SHOGUN 将軍」が米エミー賞を受賞し、時代劇が世界から注目される中、日本映画界でも本作のような骨太の時代劇がもっと製作されても良いのではないか。 1日から全国公開。2時間35分。(啓)