ゴンドラ乗務員の単調な日々 セリフなし、でもおしゃべりな映画「ゴンドラ」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
■「アイミタガイ」
親友の叶海(藤間爽子)を事故で失い、現実を受け入れられない秋村梓(黒木華)が主人公。それぞれの悲しみを抱えた、一見無関係の人々が登場するが、実は、それぞれの思いはお互いを支え合っていた。背中を押された梓は駆けだす。叶海に手を引かれるように。
藤間は10分も出ていないが、叶海は確かにいたのだという強い印象を残す。黒木はやはり達者だ。大ベテラン、草笛光子の存在感が物語に深い陰影を刻む。同名小説が原作。泣ける脚本は「台風家族」などの監督、市井昌秀が手掛けた。監督は草野翔吾。
1日から全国公開。1時間45分。(健)
■「ルート29」
謎が満載の作品だ。鳥取の精神科病棟に入院する女性から「姫路にいる娘を連れてきて」と頼まれた主人公のり子(綾瀬はるか)が、その娘ハル(大沢一菜)を姫路で見つけ、国道29号を2人で旅することに。旅の途中、まるで異界に迷い込んでしまったかのように不思議な人々と出会う。
他人と交わらずいつも一人だったのり子と、林の中に秘密基地を作るような不思議な雰囲気のハル。そんな2人が交わす何げない会話や、母と娘が再会して魚の笛を吹くシーンには、心の機微がしっかり描かれている。数々の謎は最後まで解けなかったが、〝後味〟は悪くない。監督は「こちらあみ子」の森井勇佑。
8日から全国順次公開。2時間。(啓)