日銀の利上げ、年内2回で0.5%もあり得る-伊藤コロンビア大教授
(ブルームバーグ): 米コロンビア大学の伊藤隆敏教授は、正常化に踏み出した日本銀行の金融政策運営について、2%程度のインフレ目標実現までは慎重に行うべきだとしつつ、政策金利は年内に2回、0.5%までの利上げがあり得るとの見解を示した。
伊藤氏は30日のインタビューで、ゼロ%付近で均衡していたインフレ率とインフレ期待、賃金上昇率が、2%の均衡に移行する過程にあると指摘。日銀の金融政策運営は「早過ぎもせず、遅過ぎもしない金利引き上げ局面に入っている」とし、0-0.1%程度に誘導する無担保コール翌日物金利は「今年中に0.25%とその後の0.5%はあり得る」と2回の利上げも想定している。
日銀は3月に17年ぶりの利上げに踏み切ったが、物価上昇圧力の継続や外国為替市場での円安傾向を背景に、市場では早期の追加利上げや国債買い入れの減額に対する思惑が強まっている。植田和男総裁は27日の国際会議でのあいさつで、2%の物価安定目標の実現に向けて「注意深く進んでいくつもりだ」と発言した。伊藤氏の指摘は、市場が現在想定している利上げペースよりもややタカ派的と言える。
日銀が2%均衡の実現を目指している中で、足元で鈍化傾向にある実際のインフレ率が2%を明確に割り込む前に、インフレ期待が2%に上がっていくことが重要だと主張。現在はまだ下振れリスクの方が大きいとし、2%均衡が根付くまでは利上げペースを含めて金融政策運営は「慎重であるべきだ」としている。
先行きの利上げペースは、中立金利やターミナルレート(利上げの最終到達点)をあらかじめ想定するのは現状では無理だとし、「手探りで進んでいくしかない」と指摘。長期化したデフレとゼロ%付近の金利水準を経て、30年近く経験のない世界を目指す局面に入っていることに加え、少子高齢化の影響に関する見解も収れんしていない中では、「中立金利がどこにあるか、やってみなければ分からない」という。