維新の歴史が刻まれた老舗料亭で長崎の卓袱(しっぽく)料理を味わう
【百年料亭】料亭一力/長崎県長崎市
幕末から明治へと向かう激動の時代、長崎には多くの勤王派志士たちが集い、熱い議論を交わしていた。その舞台の一つとなったのが、創業200余年を数え、長崎最古といわれる料亭「一力」である。老舗中の老舗としての格式を誇る一力には、明治以降も多くの著名人、文化人が訪れた。入口の傍に立つ「小唄辰己」の碑もその歴史を語るものの一つで、常磐津家元・三蔵と、日本画家の伊東深水が滞在中、湯につかりながら口ずさんだことから生まれたものだという。
そんな一力でぜひとも味わいたいのが、長崎ならではの「卓袱(しっぽく)料理」だ。古くから海外との交易で栄えた長崎には、日本・中国・西洋(オランダ)の文化が融合した、エキゾチックな「和華蘭(わからん)文化」が花開いた。それが料理に反映されて誕生したのが卓袱料理であり、長い伝統の中で和食と中華料理が融合し、さらに西洋のエッセンスも加えて独自の料理となった。卓袱とは中国風の朱塗りの円卓で、大皿に盛った料理を取り分けるスタイルが、特に宴席などで好まれたという。贅を尽くした老舗料亭の一室で、伝統の卓袱料理に舌鼓を打ちつつ、この同じ場所で熱い思いを語り合ったであろう志士たちの時代に思いを馳せてみたい。 一力が位置する寺町通りは、石畳の小道に沿って2社14寺がほぼ一列に並び、長崎の中でもひときわ趣ある街並みとなっている。一力ののれんをくぐる前には、周辺の歴史散策も欠かせない。 料亭一力 【所在地】長崎市諏訪町8-20(寺町通り) 【電話】095-824-0226 【営業時間】11時30分~13時30分、17時~19時30分 【定休日】不定休 【駐車場】有 ※「百年料亭」は百年料亭ネットワークの登録商標。百年料亭ネットワークは、古くからの日本料理を守り、また、それぞれの家風や仕来りを継承しながら、これからも地域の老舗として大いに飛躍する共に、お互いの交流や国内外からの誘客を促進し地方都市の活性化に資することを目的としている。