模索する「次の10年」 連綿と続く機雷掃海の歴史 対中スクランブルの負荷増大 「自衛隊70年の現在地(1)」
7月1日で自衛隊発足から70年となった。厳しさを増す安全保障環境と向き合う自衛隊の現場から現状と課題を探る。 【表でみる】自衛隊の歴史と防衛力整備の推移 ■機雷除去は「まさに心理戦」 ズン…。掃海艇の木造甲板を下から衝撃が突き上げた。同時に約800メートル先の海面がむくむくと盛り上がり、轟音とともに砂混じりの白黒の水柱が約30メートル立ち上がった。「水柱視認、爆破成功」と艦上放送が流れる。海底で爆発したのは、艦船の磁気や音に反応して炸裂する機雷だ。 機雷除去を主な任務とする海上自衛隊の掃海部隊が6月21日、小笠原諸島の硫黄島沖で行った実機雷処分訓練。今年で発足70年の陸海空自衛隊は一度も戦火を交えたことがないが、掃海部隊だけが敵機雷による〝戦死者〟を出した経験を持つ。海上保安庁の下部組織だった昭和25年、朝鮮戦争で国連軍側の要請により任務に就いた際のことだ。 この日の訓練の「感応掃海」では、海底の機雷を爆破させるため、掃海艇は「ドコドコドコ…」という艦艇の通過音を鳴らす音響装置と、電流で磁場を発生させるケーブルを後方に引いて時速10キロ程度でゆっくりと航行した。 「敵の意図を読み、空母を狙ったと想定すれば空母のような通過音や磁場を出す」と海自隊員が説明した。機雷は炸裂までの通過回数も設定できるため1回で作動するとは限らず、掃海艇は何度も海域を通過する。隊員が続けた。 「まさに心理戦です」 ■機械に任せるべき最適解を模索 安価で海上封鎖できる機雷戦は昔ながらの作戦だ。先の大戦後には、米軍が約1万2000個、帝国海軍が約5万5000個を敷設した機雷が残り、民間商船の犠牲が出た。そこで旧海軍の掃海部隊が衣替えして海上保安庁として任務を継続した。 日米史に詳しい阿川尚之慶応大名誉教授は著書『海の友情』で「帝国海軍から海上自衛隊へと糸をつなぎ、戦後日米海軍関係の重要な礎石を築いた」と記す。掃海任務は潜水艦を発見・追尾する対潜戦とともに、米軍が海自に頼る重点分野だ。 だが、護衛艦の建造費が年々高くなり、人手不足も重なったため、海自は掃海任務に特化した専門部隊から、無人機による掃海システムを備えた新型護衛艦(FFM)へのシフトを進めている。