センバツ2024 京都外大西、雨中粘るも涙 昨春覇者に先制点 /京都
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)第3日の20日、京都外大西は初戦となる第2試合(1回戦)で山梨学院(山梨)と対戦した。昨春の覇者を相手に、二回に先制して渡り合ったが、中盤から失点を重ねて1―7で敗退した。18年ぶりの出場で勝利の校歌を甲子園に響かせる夢はかなわなかったが、強い風雨の中、最後まで諦めずにボールを追いかけた選手らの姿に、スタンドから温かい拍手と声援が送られた。【水谷怜央那、矢倉健次】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 真冬を思わせる寒風が吹き付けた大会第3日の甲子園。三塁側スタンドには京都外大西の生徒やOBが大勢駆けつけた。応援団長の石谷礼也(2年)が「粘り強く全力でとにかく勝ってほしい」と願い、声を張る。熱い大声援を背に、昨春覇者への挑戦が始まった。 先発のマウンドに立ったのは、エースの田中遥音(3年)。スタンドで雄姿を見守った父直樹さん(45)と母涼子さん(44)は「私たちはドキドキしていますが、マウンドの息子は落ち着いているように見えます」。二塁打を浴びながら一回を無失点に抑え、上々の滑り出しを見せた。 二回、4番の相馬悠人(3年)が先頭で勢いをつける。振り抜いた打球は中前に。父邦夫さん(54)は「最近練習試合で打てないと言っていたので良かった」と胸をなで下ろした。主砲の一打でチームは緊張がほぐれ、続く松岡耀(3年)の二塁打、清水陽耀(3年)の遊ゴロで先制に成功。応援団は隣同士でハイタッチし、スタンドは大きく沸いた。 だが、天候が悪化するにつれて試合の雲行きも怪しくなる。四回に1点を返されて同点に。六回に2点、七回にも4点を立て続けに失い、突き放された。雨は一時みぞれに変わり、守備では強風の影響か、相手の打球を落とす一幕もあった。 本来は制球の良いエースも調子を乱した。試合の行方を見守る丸山貴也コーチは「田中が球を操れていない」。珍しく6四球を出し、初めての甲子園と悪天候に苦しんだ。 それでも、父直樹さんは「良いときは舞うような投球をする。まだ諦めていない」。マネジャーの奥田星来(3年)も「前に大差で負けていたところから大逆転した。九回で逆転します」と、声援に一層の力を込める。 九回、ベンチ前の円陣で「力を出し切れ」と送り出された選手たちは粘りの攻撃を見せる。田中が二塁打で出塁し、相馬の遊ゴロで2死三塁とした。だが、松岡が打ち上げた打球は左翼手のグラブに収まり、昨秋から快進撃を続けてきた京都外大西の挑戦は終わった。 完投した田中は「雨のせいではない。力負けだった」と弁解せず責任を背負った。冷たい雨の中、熱戦を繰り広げた選手らに温かい拍手が送られた。 ◇東邦高友情応援、洗練の音色 ひときわ大きく洗練された音色が三塁側の観客席から鳴り響いた。京都外大西の応援に加勢したのは愛知県の東邦高マーチングバンド部。全国大会に出場するほか、海外遠征も行う屈指の強豪校だ。 京都外大西の吹奏楽部は部員が13人と少ない。これまで島良輔顧問の母校・奈良学園大のマーチングバンド部に応援を頼んできたが、今春は同部の大会と日程が重なった。 18年ぶりのセンバツ出場を演奏で盛り上げるため、島顧問が親交のあった東邦側の白谷峰人監督に相談。友情応援が実現した。 東邦マーチングバンド部の49人は抽選会があった約2週間前から練習を開始。京都外大西オリジナルの「コンバットシリーズ」計8曲などを練習してきた。部長の平井美羽さん(3年)は「絶対に負けないように最後まで全力で応援します」。スタンドから京都と愛知の合奏で試合を盛り上げた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇聖地で見せた、主砲の風格 相馬悠人選手(3年) チームの主砲が試合を動かした。二回表、先頭打者として打席に立つと、練習通り直球を上からたたく。打球は低い軌道で中堅手の前に落ち、待望の先制点の起点となった=写真・吉田航太撮影。 「マイナス思考なんです」。失敗する姿を考えがちだが、試合になると顔つきが変わる。上羽功晃監督も「まだ幼いがゲームになると腹をくくる。ええ顔してる」と評価する。 近畿大会などの大舞台で勝負強さを発揮してきた。「自信が無くなった時は誰かのためにと思って打席に立ちます」。マイナス思考にならないように家族、友人、マネジャーなどの顔を思い浮かべて打席に向かってきた。 甲子園の打席でも支えてくれた人たちの顔を脳裏に、バットを振った。初の聖地で2安打を放ち、4番の風格を見せた。それでも試合後は肩を落とし、「打ちたい気持ちが強すぎて、釣り球も振ってしまった」と反省した。 「簡単にアウトにならない粘り強さと強いスイングを身に付けていきたい」。目線を夏に向け、練習に臨む。 〔京都版〕