ホンダの新しい電気自動車はかつての個性を取り戻せるのか “独創のホンダ”の意地と張りに迫る
ホンダが開発中ピュアEV(電気自動車)は、はたしてどうなるのか? ひと足先に、新技術を体感した今尾直樹がリポートする。 【写真を見る】新型0シリーズの詳細(18枚)
全貌は来年初頭判明か
2040年までに新車販売をすべてEVとFCEV(燃料電池車)にする、と、宣言しているホンダは、どんなEVをつくろうとしているのか? その開発の方向性と、それを実現するための新しい生産技術が公開された。10月の第1週、ホンダの開発拠点の「四輪事業本部ものづくりセンター栃木」で開かれた「ホンダ0(ゼロ)テックミーティング2024」なるプレス向けのワークショップがその場だった。 0とは、ホンダが2026年から北米市場を皮切りにグローバルで展開するEV「ホンダ0(ゼロ)シリーズ」を指す。そのコンセプトモデルは本年1月、ラスベガスで開かれているCES2024で2台展示されている。1台はランボルギーニ「カウンタック」みたいに低くて平べったい「SALOON(サルーン)」という名前のセダンで、フラッグシップとなるこれは“コンセプトにかなり近い形で”、2026年に上市(じょうし)する予定とされる。 もう1台は「SPACE-HUB(スペース ハブ)」というワンボックス型のワゴンで、広々とした空間を最大の特徴とする。これらはあくまでコンセプトだけれど、ホンダ0シリーズは2030年までに小型から中大型までグローバルで7モデルを投入する計画だとされる。 ホンダ0-テックミーティング2024の主役はまぎれもなくサルーンである。2026年の上市ということは、2025年にはその市販型が2026年モデルとして北米でデビューを飾るはずだからだ。配布されたリリースには、来年1月のCES2025で今回公開した技術や考え方を具現化したプロダクトをホンダ0の新しいモデルとして公開予定だとある。それがサルーンになるのか、あるいはまた別のSUVになるのか、答は2カ月ほど待たねばならない。 そう。SUVがメインストリームである。北米市場はなおさらに。SUVの投入は必然で、実際、サルーンと同じアーキテクチャーを用いた、外見は「CR-V」の開発車両が今回のミーティングにも用意され、記者はそれにごく短時間ながら試乗している。その印象は後述するとして、その売れ筋のSUVもあるのにホンダはいったいなぜ、スーパーカーみたいに平べったいサルーンのようなカタチのセダンをフラッグシップに位置づけ……ということはその象徴的存在に仕立てようとしているのか? それは、開発陣のなかに元スーパーカー少年のクンタッチ好きがいるから……というのは筆者の勝手な憶測ですけれど、“Thin, Light, and Wise(薄く、軽く、賢く)”というホンダの新しいEV開発のアプローチを江湖に広く訴えるためだと考えられる。 そもそもEVは厚くて重いものになる傾向がある。航続距離を延ばすには電池をたくさん積む必要があり、電池をたくさん積めば、衝突時の安全確保のためにも、ボディは大きくなる。EV開発のこの常識に背を向けたところに“独創のホンダ”の意地と張りがある。伝統のM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想と“独創のホンダ”の合体が、“薄く、軽く、賢く”のホンダ0なのだ。 “賢く”は、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)やIVI(In-Vehicle Infotainment=車載インフォテインメント)、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ヴィークル)等の知能化を指している。わけだけれど、自動車というのはひとが運転して楽しむものである。という時代遅れの記者の持論でもって、ここでは自動車のハードウェアに絞って紹介する。