根菜と酒かす生かした「サトヤマ・リキュール」誕生 雇用生んで魅力発信、いつか「ふなずし」も活用⁉
ハーブ独特の香りとともに、苦みやフルーティーな味わいが口の中に広がる。鈴鹿山麓の滋賀県多賀町内で栽培される赤い根菜・ビーツが主原料で、名付けて「サトヤマ・リキュール」。開発した岩下晃士さん(35)は瓶を手に取り、「すごくおいしいし、くせになる味」と笑顔で話す。 「健康志向の人たちにたしなんでほしい」と、地域の農家が無農薬で栽培するビーツを、ハーブやスパイスとともに大吟醸の酒かすを再利用した粕取(かすとり)焼酎につけ込む。アルコール度数は18度で、水で割ったり、食前酒にしたり。地元のイベントの来場者や友人からは「優しい味わい」などと好評を得た一方、苦手な人もいると正直に語る。 熊本市出身で理容師の専門学校を卒業後、飲食の仕事に就き、ワーキングホリデーで滞在したオーストラリアではビールの醸造も経験した。2022年秋から多賀町の地域おこし協力隊となり、地元のNPO法人おおたき里づくりネットワークで空き家の活用や高齢者の買い物支援などをしている。 温かい人柄の住民にとけ込む中、地域資源を使った酒もつくってみたいと、リキュールづくりを発案。粕取焼酎を使うのは、廃棄される日本酒の酒かすを何とか再利用できないかと考えたから。趣旨を理解した滋賀県草津市の酒造会社から仕入れて活用している。 まだ酒類製造の免許がなく、岩手県の酒造会社に委託し製造しているが、将来は自前での醸造を目指す。地元の富之尾地区で30年ほど前に廃業した酒蔵をその拠点にしようと、改修費など150万円をクラウドファンディング(キャンプファイヤー)で来年1月下旬まで募っている。 サトヤマ・リキュールは500ミリリットルと200ミリリットルで、里づくりネットワークの事務所(富之尾)で販売している。今後はビーツ以外にも、イチゴやシャインマスカットのリキュールも構想。「ふなずしを使うとか、ここでしか作れないものに取り組みたい」。いずれは事業会社を立ち上げ、「雇用を生み、多賀の魅力発信やまちづくりの拠点になる取り組みにしたい」と意気込む。多賀町。