仏は「大規模テロの時代」に突入? 南部ニースでトラック暴走80人以上死亡
射殺された運転手は仏とチュニジアの二重国籍の男
フランスのテレビ局BFMとAFP通信は、捜査関係者の話として、トラックのドライバーが31歳の男であったと報道。警察に射殺された男はニース在住で、フランスとチュニジアの二重国籍保有者であったと伝えられている。トラックの車内に残された身分証明書などから、男の身元が判明したのだという。 チュニジア系とされるドライバーの男と、ISISなどのイスラム系過激派組織との間に何らかの繋がりが存在したのかは不明だが、現地時間で15日午前3時半から緊急のテレビ演説を行ったフランスのオランド大統領は、「フランス全土がイスラム過激派によるテロの脅威に晒されている」と語り、イラクとシリアにおける軍事作戦の強化を発表した。 また、昨年11月にパリで発生した同時テロ事件以降フランスで続いていた非常事態は今月26日に解除される予定だったが、オランド大統領は非常事態が26日以降も継続されることを発表した。もともとは5月26日に解除される予定であったが、サッカーの欧州選手権や自転車レースのツール・ド・フランスにおけるテロの脅威が懸念され、2か月の延長が国民議会で可決されていた。
シャルリ・エブド事件から1年半 無差別殺傷が相次ぐ
フランスの首都パリで昨年11月に発生した同時テロ事件は記憶に新しい。市内中心部の6か所で爆弾や銃撃による無差別殺傷がほぼ同時に発生。容疑者を含む137人が死亡し、360人以上が重軽傷を負った。 パリ周辺でほぼ同時刻に発生したテロ。テロは6か所で発生したが、その中で最も大きな被害を受けたのがパリ市内中心部にあるライブハウス「バタクラン」だった。1500人収容のライブハウスでは、事件当時アメリカのバンドの演奏が行われており、そこで発生した無差別発砲によって80人以上が殺害されている。130人の犠牲者の国籍は21カ国にも及び、少なくとも6人のイスラム教徒も含まれていた。 サッカーのフランス対ドイツの親善試合が行われていたスタット・ドゥ・フランスの外でも爆発が発生。入場券を持った男がスタジアムに入ろうとした際、ボディチェックで不審に感じた警備員が男に対し、入場口の近くで再度身体検査を試みようとした。その矢先、男は少し後退し、着用していた爆弾付きのベストを起爆させたのだという。その3分後にはスタジアムの外にいた別の男も自爆し、さらにその近くにあるファストフード店の前で3人目の男も自爆している。フランスのオランド大統領とドイツのシュタインマイアー外相も観戦に訪れていたこの試合では、試合終了後に2000人以上の観客がピッチに入り、スマートフォンなどで状況を確認する様子が各国のニュースで大きく取り上げられた。 その年の1月、覆面をした2人組が風刺週刊紙「シャルリ・エブド」編集部を襲撃。編集部内でアサルトライフルを乱射し、編集長を含む12人を殺害し、11人を負傷させた。編集部襲撃後に逃走を図ろうとした2人組は、付近をパトロール中の警察官と遭遇。命乞いをする警察官を射殺する瞬間はビルの屋上に避難していた一般人によって携帯電話で撮影され、その一部が世界中に発信されたことで大きな衝撃を与えた。2人はアサルトライフルとショットガンで武装し、携帯型のロケット弾も所持していた。 20世紀にフランス国内で発生したテロ事件は約60件。その中で最も多くの犠牲者を出したのが、1961年に発生した電車爆破事件であった。これはアルジェリアの独立に反対するフランスの極右民族主義者によって起こされたもので、仏東部ストラスブールからパリに向かっていた特急列車が爆破され、28人の死者と100人を超す負傷者をだす大惨事となった。フランス国内で死者が2ケタに達したテロは、20世紀ではこの列車爆破事件のみで、90年代半ばにはイスラム過激派による地下鉄を狙った爆弾テロが相次いで発生し、数百人の負傷者を出したものの、死者が二ケタを超えることはなかった。 2015年1月のシャルリ・エブド襲撃事件で21世紀では初となる二ケタの死者を出したフランス国内では、その年の11月にパリで発生した同時テロで、フランス史上最悪となる130人が犠牲となった。14日夜にニースで発生した事件もテロとの見方が強まっており、フランスは「大規模テロの時代」に突入した。