日本の永住権所有者が震え上がる「入管法改正」の中身、実習制度の改善の裏で実は起きていること
■「永住権取得はあきらめた」という外国人経営者 条件だけ見るとハードルは高くないように見えるが、日本の一流企業の役員で、日本で15年以上働いている外国人経営者は、永住権を取得するのがいかに大変だったかをこう振り返る。「永住権の申請にはとても時間がかかったので、5年ビザの更新も同時に申請した。そうしないと、オーバーステイになって日本から追い出される危険性があった」。 「私は日本人の妻と結婚して25年になるが、配偶者ビザを取得するために、25年に及ぶ結婚生活を綴った長いエッセイを書かなければならなかった」と、外資系企業を経営する別の外国人経営者は話す。
「2回目の申請でも、1年間の配偶者ビザしか取れなかった。3度目は5年間のビザを取得できた。妻にも収入があるのに、入国管理局は、1年以上のビザを取得するために私の収入を確認するよう求めてきたが、なぜ夫が妻と暮らすための長期ビザを取得するために収入を正当化しなければならないのだろうか」。彼は入管での手続きの面倒さと不合理さに辟易して、永住権の取得を完全にあきらめた。 今回の改正により、法務省の担当者は外国人の納税記録を査定しなければならなくなるため、仕事量が増えるだろう。さらに永住権からビザに「降格」した人たちの申請の審査もすることになれば、さらに多忙になるのは避けられない。
中には外国人の永住権は日本人には関係ないと考える人もいるだろう。だが、すでに多くの場面で外国人は日本に暮らす人々の生活を支える事業やサービスの従事しているほか、今後さらに人口減が進む中で、第一次産業から第三次産業までにおける貴重な労働力となることは間違いない。 こうした中で、日本が外国人を惹きつける唯一の方法は、彼らの滞在中――特に永住権を取得した後は――彼らを日本人のように扱うことである。 ■日本における「永住者」が置かれた立場
約25年前、詩人の大岡信氏の別荘で、新年会に出席する栄誉にあずかった。同氏は、あるとき長いフライト中に、日本人のビジネスマンのグループが自然に輪になって議論していることに気がついた、と来客たちに語った。このことで、日本社会が輪のように機能することを同氏は認識したという。 グループでは、人々が受け入れられるために苦闘し、固い結びつきのコミュニティを形成し、深刻なミスを犯した場合のみ追い出される。このイメージが現在の外国人への永住権の待遇を完全にとらえている。
つまり、永住権は、厳しい審査の後に与えられ、その保有は日本国民と同等の安定性を保証する。大岡信氏の言葉では、一度永住者になれば、外国人は、自分が日本人による「輪」の中にいる「点」のように感じる。しかし、今回の改正案は、外国人は決して完全には日本の一部となることが認められないということを示している。彼らは「非永住者」であり続けるのだ。
レジス・アルノー :『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員