岡口判事の弾劾裁判にみる「制度の欠陥」 裁判員の国会議員、欠席や交代だらけ 出欠状況を総まとめ
●調書だけで適切な判断ができるか?
もちろん、すべての公判に出席しなければ、適切な判断はできないということではない。欠席しても公判調書を読めば、何があったかは概ねわかるし、通常の裁判でも異動などで裁判官が途中で変わるケースは珍しくない。 だが、証人の表情や仕草などから得られる情報はあるし、その場にいないと直接質問もできない。訴追請求した女子高生殺害事件の被害者遺族と、岡口判事の尋問の計4回をすべて聞いた裁判員は半数以下の6人しかいない。 岡口判事弁護団の伊藤真弁護士は結審後の記者会見で、裁判員の交代が判決に及ぼす影響について次のように述べた。 「(裁判の原則は)直接主義なので、証人尋問を見てほしかった気持ちはある。ただ、今回の弾劾裁判の証人尋問は、証言の信用性などに重点があるというより、証言の内容が重要。裁判員の交代は多かったが、書面をきちんと読んでもらえれば、通常の裁判に比べれば補えると考えている」 しかし、多忙を極める議員に記録を読み込む時間があるのだろうか。裁判員の適切さを外部から検証するとしたら、法曹資格など法律の専門性と出席回数に頼るほかないのではないか。 弾劾裁判が開かれたのは、約10年ぶり。そんないつあるかも分からない裁判のために、国会内(参議院第二別館)には旧最高裁の大法廷を参考にした約213平米(約65坪)の立派な法廷が用意され、期日はいつも一同起立・礼という「儀式」から始まる。 一見すると「コスパ」が悪いが、裁判、特に三権分立のバランスを崩しかねない弾劾裁判の特殊性を思えば、正統性や権威性を確保するための「必要経費」なのだろう。だからこそ、裁判所組織も岡口判事のSNS発信を問題視していたともいえる。 ひるがえって、弾劾裁判の運営面でそれらを確保するための努力は十分だったといえるだろうか。現状の仕組みで十分なのだろうか。結論が発表される前の「ニュートラル」な状況だからこそ指摘しておきたい。