「ヤマハとは異なる発想で差別化」売上急上昇のフェンダー、史上初のギタリストCEOが変えたこと
世界的ロック・ギタリストたちがナッシュビルのフェンダーに集結
フェンダーのCEOというポジションは、アンディさんにとって、まさしく天職なのだろう。 「以前別のインタビューでもリッチー・ブラックモアさんが自分のヒーローだと話したことがあります。すると、ほどなく本人から自筆の礼状が届きました。あのときの感激は忘れられません。ほかにもポール・マッカートニーさんや、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジさんなど、私のロック・ヒーローたちにもお目にかかれました」 8月にアメリカ、テネシー州ナッシュビルに開設したアーティストセンターのオープニングには、世界的ギタリストが終結した。 「ジャック・ホワイトさん、ZZトップのビリー・ギボンズさん、フー・ファイターズのクリス・シフレットさん……。自分の目を疑うような光景でした。しかも、彼らはフェンダーのギターを手に取り、やがてジャム・セッションが始まったのです。夢を見ているのかと思いました。実際にフェンダーCEOは、私にとっては夢のような仕事。この幸運をビジネスにきちんと反映させていきたいです」
エレキとアコギの音を生む新ギター、アコスタソニックは日本市場の起爆剤になるか?
フェンダーは日本のマーケットにも力を入れている。東京・原宿の明治通り沿いには世界初の旗艦店Fender Flagship Tokyoを2023年6月にオープン。人気モデルからカスタム・モデルまで展開している。 「日本にも、アイバニーズやヤマハなど、すぐれた楽器ブランドがあります。私たちは彼らと競合していかなくてはなりません。私の分析では、アイバニーズはヘヴィなサウンドで、アメリカのブランドではおそらくジャクソンと競うと考えています。ジャクソンは自社の傘下ブランドですが非常に速いスピードで成長しています。一方ヤマハは、アコギのマーケットでの強さが目立っています。そこで私たちフェンダーは、ヤマハとは異なる発想でブランドの差別化をはかろうとしています」 その結果生み出されたのが、アコスタソニックという新ギター。 「幅広いアコースティックとエレクトリックのトーン、そしてそれらを融合した音を出せるギターです。エフェクト・ペダルを使ってもハウリングを起こすことのない画期的なギターです。ただ、危惧していることはあります。ギター弾きには、新しいものや変化を好まない傾向があるんですよ。今後アコスタソニックをどう展開していけるか、市場をうかがっているところです」
TEXT=神舘和典