「ヤマハとは異なる発想で差別化」売上急上昇のフェンダー、史上初のギタリストCEOが変えたこと
Fコードを押さえるハードルを越えると新しいギターの景色が見えてくる
意外なことに、フェンダーの歴代のCEOのなかで本格的にギターを弾いていたキャリアを持つのはアンディさんが初めて。経営者でありユーザーでもある経験を経営に存分に生かしている。 「子どものころからギターを弾いてきた体験は、フェンダーのCEOとしてさまざまなジャッジをするのにとても役に立っています。マーケット・リサーチで、10人に9人がギターで挫折をしているという事実が判明したときも、その状況をリアルに理解できました。最初にアコースティック・ギターを持つと、硬いスティール弦を押さえることに苦しみます。そのリスクがわかるのです」 アンディさんが初めてギターを手にしたのは小学生のときだった。 「8歳か9歳のころに、アコースティック・ギターを手にしました。ただし、硬いスティール弦ではなく、やわらかく弾きやすいナイロン弦のスパニッシュ・ギターです。アコギをエレキ・ギターに持ち替えたのは10代になってからでした。女性にモテたい年頃になり、その願望からエレキでロックを演奏するようになりました(笑)」 10代後半から20代にかけては、ギターを教える仕事も経験した。 「女性にもギターのレッスンを施しました。彼女たちは初心者。多くがスティール弦のアコギ、あるいは12弦ギターを弾いていました。親がエレキよりもアコギを弾かせたがったからです。ギターにはFというコードがあります。 この音を出すには、人差し指1本ですべての弦を押さえなくてはいけません。手が小さく筋力の弱い女性にとって、Fコードは最初の試練です。この段階で多くの私の生徒たちがギターを演奏することをあきらめていきました。ただし、Fの難関を突破すると、音楽の景色が一気に広がります」 ギターを弾き、ギターを教えていた体験が、弾きやすいショート・スケールの展開や、オンラインのギターレッスン「Fender Play」の実現につながっている。