「松田聖子や小泉今日子の若い頃とも違うオーラが」 「SHOGUN」ヒロインの恩師が語る、特異なキャラクター
「ぶつかることも」
子役として共演した市川宥一郎氏も、こう振り返る。 「子役は普通、言われたことだけをやろう、となってしまうものです。海外経験が長く、やりたいことを言葉にできる彼女は、とても大人っぽく見えました。休憩中、子どもたちがキャッキャッと騒いでいるときに、彼女だけは学校の課題に黙々と取り組んでいたのを覚えています」 「アニー」の公演を終えてしばらくすると、アンナは吉野氏のダンス教室の門をたたいた。 「踊れるジャンルを増やして、何が合うのか知りたかったのでしょう。うちでは1時間45分を一区切りで教えていますが、アンナはそれを1日3本、集中力を欠かさずにこなしていました。レッスン中は“なんでこうするのですか?”“こうしてはダメなんですか?”と、疑問を抱くとなんでも質問してくるので、ぶつかることもありましたね」(吉野氏) 曖昧では済まさない姿勢は、今も変わらない。 「今回の受賞インタビューで、“アジア人初の受賞ですが、どうですか?”と問われ、彼女は“日本人初とは聞いてますが、アジア人初なのかどうか……”と、その場でスタッフに確認していました。しっかり自分で納得してから、正確に応じようとする。改めてアンナはすごいと思いました」(同)
「からかうと低い声で“シャラップ”」
ダンス教室を卒業後、女性ボーカルグループのメンバーとして活動するも、鳴かず飛ばず。女優の夢を追い求めて渡米したのは6年前だ。徐々に話題作にも出演するようになり、32歳にして栄光を手にした。 吉野氏が昔日のやりとりを懐かしむ。 「私が“帰り道に気を付けな。自転車の後ろにオバケが乗ってるかもよ”とからかうと、低い声で“Shut up(黙れ)”と言われたこともありました。彼女には、またミュージカルに出演してほしいですね。それが、アンナの持っているパフォーマンスのすべてを観られる舞台ですから」 世界に羽ばたく“元アニー”から目が離せない。
「週刊新潮」2024年10月3日号 掲載
新潮社