「認知症」リスク、短期間で資産を減らす“負の財産ショック”で高まる 中国研究グループ発表
中国の浙江大学らの研究グループは、経済的困窮や資産減少が認知機能に与える影響について研究した結果、短期間で資産を大幅に減らした人は認知機能の低下速度が速くなり、認知症発症リスクが高まることが示唆されたと発表しました。この内容について田頭医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
中国浙江大学らの研究グループが発表した研究内容とは?
編集部: 中国浙江大学らの研究グループが発表した研究内容について教えてください。 田頭先生: 今回紹介する研究は中国の浙江大学らの研究グループによるもので、成果は学術雑誌「JAMA Network Open」に掲載されています。 研究グループが注目したのは、急激な資産減少や新たな負債の増加による「負の財産ショック」です。負の財産ショックは、心血管疾患、薬物乱用、うつ病、死亡率の増加などと関連することが報告されていたものの、認知症リスクについてはこれまでほとんど検討されていませんでした。 そこで研究グループは、アメリカのHRS(Health and Retirement Study)の参加者のうち8082人を対象に、認知症リスクの調査・分析をおこないました。対象となった8082人の平均年齢は63.7歳で51.7%が女性でした。分析対象となった期間中、新たに認知症を発症したのは1441人で、2185人が負の財産ショックを経験していました。また、339人がベースラインで「貧困」でした。残りの5558人は資産を維持していました。 資産を維持していた人と比べて、追跡中に負の財産ショックを経験した人はベースラインの認知スコアが有意に低く、貧困状態にあった人も資産を維持していた人と比べて、ベースラインでの認知スコアが低い状態でした。 研究グループは、「今回のコホート研究において負の財産ショックは、年齢や民族による修正を伴いながら、アメリカの中高年者における認知機能低下の促進や認知症リスクの上昇と関連していた。これらの知見は、さらなる前向き研究や介入研究によって確認されるべきである」と結論づけています。