V5内村のリオ五輪連覇に死角はないか
今回、中国チームはこのデンをオールラウンダーのエースとして扱い、全種目に出場させるという厳しい日程を課しているが、これはあきらかに2年後のリオ五輪を意識したものだ。今後、演技の完成度を上げてくれば非常に怖い選手なりそうだ。 森泉コーチが警戒する選手はほかにもいる。ウクライナのオレグ・ベリニャエフだ。 今回の個人総合では4位と惜しくもメダルを逃したが、21歳という若さに加え、Dスコア39・1点(内村は38・6点)という高難度の技をそろえている。森泉コーチは、「彼は元々強い選手だったので、表彰台には絡んでくると思っていた。でも、彼だけじゃない。“打倒・内村”を狙ってきている選手は何人もいる」と言う。 一方、水鳥監督が注目したのは各国選手のDスコアだ。指揮官は、「日本以外の国で、Dスコア(演技の難度を示す点)をものすごく高めている選手がいる。リオに向けては、『個人総合では日本が1位なんだ』と楽観視していてはいけない」と力を込める。 実際に、内村のDスコア(38・6点)を上回る選手は今回の個人総合で3人いた。もちろん、やみくもに演技の難度を上げても実施点が伴わなければ意味がないのだが、練習を重ねれば怖い存在になる。 また、さらに水鳥監督は「危機感は去年よりも感じている」とも言った。それは、内村を除く個人総合の上位勢の顔ぶれが昨年と比べて一変し、若い選手になったからだろう。 銀メダルのウィットロックは21歳。4位のベルニャエフも21歳。そして5位のダビド・ベリャフスキー、6位のデンはいずれも22歳。若さゆえに、2年間でさらに力を伸ばしてくることが予想され、要注意だ。 ただし、ここまで書いてきたことは、内村が現段階で危機に直面しているという意味ではない。2年後のリオ五輪に向けて見通しが厳しいという意味でもない。どんなに強い選手にも死角が生じる可能性は常にあり、しかもライバル候補がどんどん出現しているという事実があるという意味だ。 加えて、今回台頭してきた若手の存在によって内村が気持ちをさらに引き締めていけば、死角はそれだけ少なくなっていくだろう。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)