【玉ノ井親方 視点】大の里は既に大関を上回る力を身につけているが、現状維持では成長は止まる
◇大相撲秋場所14日目(2024年9月21日 両国国技館) 優勝が懸かった大関戦で、今場所一番の会心の相撲を取った。これで、大の里の大関昇進に異論を挟む余地は、1ミリもなくなった。それどころか、この2日間の大関戦で、既に2大関を上回る力を身につけていることを証明した。その先にある地位にも、そう遠くないところまで近づいていると感じさせた。 【写真】<大相撲秋場所14日目>土俵に一礼して引き揚げる大の里と盛り上がる場内(撮影・篠原岳夫) 成長の原動力は、右を差して前に出る形に加え、左からのおっつけを覚えたことだ。横から押すのではなく、下から押し上げるようにおっつけることで、相手を自由に動けない状態にしている。 それだけではない。この日の豊昇龍戦のように、もろ手突きで押し込み、一気に前に出て勝負を決めることもできる。既に安定感は幕内随一だ。 ただ、だからと言って来場所も同じように順調に勝ち星を伸ばせるとは限らない。当然、対戦相手も取口や癖を研究し突いてくる。現状維持では成長は止まる。 大関の先を目指すのであれば、まわしを取る相撲も身につけた方が良い。そうすれば、若隆景のような相撲巧者に懐に入られても、十分に対応できるはずだ。 立ち合いで受けて、右を差してまわしを引きつける相撲ができるようになれば、鬼に金棒だろう。 (元大関・栃東)