来季は米シニア参戦の藤田寛之 「練習環境もほしいから…」米テキサス州に拠点を置く考えを明かす
前週の米シニアツアー、PGAツアー・チャンピオンズのプレーオフシリーズ第2戦「シモンズ・バンク選手権」(米アーカンソー州・プレザント・バレーCC)で3位タイに入り、ポイントランキング36位までが進める最終戦に進むと同時に、来季のフルシード権を手にした藤田寛之。今週火曜日に帰国し、きょうから開幕する「コスモヘルスカップ シニアゴルフトーナメント」(埼玉県・鳩山カントリークラブ)に出場する。 藤田寛之を支えるクラブ14本【写真】 次週は米シニア最終戦、「チャールズ・シュワブ・カップ選手権」(米アリゾナ州・フェニックスCC)が控える。体のことを考えれば、米国に一週間とどまっていた方が良いのは本人も分かっている。「眠たいです」と時差ボケとも闘いながら、「この試合にエントリーしていたから帰ってきました。自分の都合で急きょキャンセルするのは失礼な話だから、これを出てもう一回戻ります」と理由を話す。土曜日の最終日をプレーした後、一度家に帰り、月曜日に再び渡米する予定となっている。 ■3位で迎えた最終18番はあえてパー狙い 6月の「全米シニアオープン」で単独2位に入ったのがすべての始まりだった。ポイントランキング72位までが米シニアのプレーオフシリーズ第1戦「ドミニオン・エナジー・チャリティクラシック」に出場することができる。藤田は全米シニアの2位で大きくポイントを稼ぎ、同ランキング45位につけていた。 その第1戦は43位タイで、ポイントランキングは45位から51位に後退。それでも同54位までが出られる翌週の第2戦に駒を進めた。「ランクが6つも下がって、厳しいと思っていました。でも確率はゼロじゃない。相手もいることですから、単独2位ならOKという感じでやっていた」。最終戦に進むためには第2戦を終えて同36位以内に入らなければならない。他の選手のポイントに関係なく、それを達成するのは優勝か2位しかないと藤田は考えていた。 初日から好スタートを切った藤田は、首位と2打差の3位タイで最終日に進む。一時は2位に順位を上げたものの、17番のボギーで一歩後退。最終18番のグリーンでリーダーボードを見ると3位タイだった。2メートルの下りのバーディパットを残しており、「(最終戦進出へ)1打足りなかったら最後はバーディを獲らないといけない。でも超下りだったので狙いにいけば3パットのボギーもある」という状況だった。 バーディを狙いにいくか、手堅くパーでいくか。ファーストパットに大きく運命が左右される。そこで、2021年から藤田のエースキャディを務める小沼泰成さんに確認すると、「パーでも行けそうです」と回答。リーダーボードには大会の順位の他に、その位置で終えたときのポイントランキングも表示されており、3位タイでも最終戦へ進出できる可能性が高いと分かったのだ。この難しい下りのパットを「超バントして(笑)」30センチに寄せ、パーでフィニッシュ。結局、ポイントランキング32位で最終戦進出と来季のフルシードを決めた。 ■米テキサス州を拠点の第一候補に選んだ理由は? 「フルシードもらっていますから、出ない選択は自分の中にないですね。出られる試合は全部出たい」。来年1月のハワイでの開幕戦は、直近2年間の優勝者やメジャーチャンピオン、ツアー5勝以上といった選手たちしか出られないため、新シーズン2戦目となる2月のモロッコ戦、「ハッサン2世トロフィー」から出場するつもりでいる。 来季の米シニアツアーは全28試合。月に3、4試合が組まれており、日本に頻繁に帰ってくるのは難しくなるため、藤田は米国に拠点を置く準備を進めている。「アリゾナとかシアトルとかアトランタとか、いくつか候補がありました。知り合い関係、全米へのアクセス、治安とかの住環境も含めて…練習環境もほしいから、今はテキサス州のダラスを考えています」。キャディの小沼さんと英語が話せるマネージャーの杉浦翔晟さんのチーム3人で転戦する予定だ。 米国での食事は「自炊が多い」という。「(小沼さんと杉浦さんの)2人が作ったり、自分が手伝ったりみたいな感じ。先週はカレーとか鍋とかトン汁とか…。ご飯は鍋で炊いています」。 ■米シニアツアーでの目標は「思いっ切り楽しむ」 藤田の今年だけの成績を切り取れば、米シニアツアーではわずか5試合の出場で2位1回、3位1回。フル参戦となれば優勝を期待してしまうところ。過去には、1992年~2010年まで参戦した青木功は通算9勝を挙げており、13年の「全米プロシニア」ではスポットで出場した井戸木鴻樹が日本勢初のメジャー優勝を達成している。 「期待は大いにしてもらっていいですよね。でも行ったら分かるのですけど、まあまあな人間ばっかりなので、そう簡単ではないところもあるでしょうね」。米シニアのポイントランキング上位に目を向けると、1位のアーニー・エルス(南アフリカ)をはじめ、4位のパドレイグ・ハリントン(アイルランド)、5位のY・E・ヤン(韓国)らメジャー覇者がひしめく。 そんな中で自ら掴んだ米シニアツアーフル参戦のプラチナチケット。「目標は楽しむこと。シードとかいちいち考えずに、一年間チャンピオンズツアーを思いっ切り楽しむ。それで良い結果がついてくればいいじゃないですか。人生楽しませてくださいよ」と55歳は胸を躍らせる。『Hiroyuki』は外国人には発音しづらいため、『Fuji』と呼ばれることが多い。12年には43歳でレギュラーツアーの賞金王に輝き、日本のてっぺんに立った。来季は登りがいのある新たな山が待っている。