新十両に昇進が決まり、ポーズをとる若碇（撮影・千葉一成）

　日本相撲協会は25日、大相撲九州場所（11月10日初日、福岡国際センター）の番付編成会議を東京・両国国技館内で行い、十両昇進力士6人を発表した。新十両は3人で、若碇（19＝伊勢ノ海）、安青錦（20＝安治川）、琴手計改め琴栄峰（21＝佐渡ケ嶽）。元幕内大碇（現・甲山親方）の長男、若碇は母を亡くした後、男手で育ててくれた父への恩返しを誓った。 【写真】笑顔を見せる若碇 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　19歳で関取の座を射止めた若碇は初々しく会見に臨んだ。「自分でもここまで順調とは思っていなかった。目標では5年以内に上がりたいと設定していた」。所要11場所、負け越しなしで番付を駆け上がった。秋場所の最後、7番相撲は3勝3敗。勝った瞬間、NHKの解説席で思わず喜びを表現したのが父だった。 　甲山親方について「相撲を始めた5歳から教えてもらった」と言い、「『体がでかくなったら強くなれる』と手料理も作ってくれた」と感謝する。母直美さんを若碇が10歳の時に亡くした。甲山親方が母親の役目も担ってくれた。「母が他界してからは家事、育児をやってもらった。十両に上がって恩返ししたいと思った。次の目標は幕内に上がって（父の）番付を超えること」と力をこめた。 　千秋楽の打ち出し後、東京・両国の母の墓前に参った。「十両に上がれそうです」と報告した。大相撲に入門後は母が使っていた交通系ICを使って、場所に通ったという。母への思いも胸に十両の土俵に挑む。 　しこ名はいずれ、父の「大碇」を継ぐ考えもある。「やっと「若碇」がなじんできたところなんで。（変えるのは）幕内に上がってからでもいいかなと思っています」。19歳が大きな夢へ羽ばたく。【実藤健一】 　◆大碇という力士　本名は斎藤剛。1972年（昭47）6月16日、京都生まれ。同大を卒業後の95年春場所、幕下付け出しで初土俵。97年夏場所新十両、00年初場所で新入幕。十両優勝2回。177センチと小柄ながら突き押しで活躍。最高位は東前頭11枚目。04年九州場所を最後に引退、年寄・甲山を襲名し伊勢ノ海部屋の部屋付き親方となる。「大碇」は明治時代に大関で活躍した名力士のしこ名。