シリーズファンを魅了し、恐怖を植え付けてきた美しき最強の究極生物…“エイリアン”10種を紹介
1979年に公開され世界中に衝撃を与えたリドリー・スコット監督作『エイリアン』のその後を描いたシリーズ最新作『エイリアン:ロムルス』が大ヒット公開中だ。宇宙を舞台に謎の宇宙生物の恐怖を描いた本シリーズの魅力は、圧倒的パワーと強い生命力を持つ究極の生物エイリアンたち。シリーズを飾ってきたエイリアンを振り返ってみたい。 【写真を見る】宿主の胸を突き破り、産声をあげるエイリアンの幼体、チェストバスター ■卵から成体まで…エイリアンの形態変化とスペックをおさらい 有機体と機械が融合したような不気味なエイリアンをデザインしたのは、スイスの前衛画家H・R・ギーガー。エッグチェンバー、フェイスハガー、チェストバスターと姿を変えながら成体ゼノモーフへと成長する。第1形態のエッグチェンバーはエイリアンの卵で、『エイリアン2』(86)では、巨大な女王エイリアン・クイーンが巨大な産卵管からエッグチェンバーを産み落とす様子が描かれた。高さは1m足らず、半透明で光をかざすと内部にフェイスハガーが潜んでいるのがわかる。寄生対象が接近すると上部が開き、フェイスハガーが飛び出す。 フェイスハガーは長い尾を持つ節足動物に似た第2形態。8本の長い脚と尾で寄生対象にしがみ付き、体中央にある管を使って胚を対象の口腔から注入する。力が強くしがみ付いた対象から引きはがすのは困難。強い酸性の体液を持つため、損傷させると宿主や周囲へのダメージも大きい。動きはすばやいが、目を持たず音や体温を頼りに寄生対象を感知するため『ロムルス』ではそれを逆手にとって回避する姿が描かれた。『エイリアン3』(92)にはクイーンの胚を産み付ける大型のクイーンフェイスハガー(スーパーフェイスハガー)も登場した。 チェストバスターは宿主の体内で成長した第3形態。胚を送り込まれてから数時間程度で宿主の胸など体を破って飛び出す。宿主のDNAを受け継ぐため形状や大きさは個体差がある。『エイリアン』第1作では四肢は小さくヘビ状だったが、『3』の犬(『完全版』では牛)に寄生した個体は成体に近いなど成長の過程やスピードもまちまちだ。 チェストバスターが脱皮しながら成長した最終形態の成体がゼノモーフ。当初ビッグチャップ(大きな頭)と呼ばれていたが、『2』の劇中でゼノモーフと呼ばれたことでこの呼び名が定着した。身長は約2メートル、湾曲した巨大な頭部と二重構造の口、標的を刺し貫く鋭利な尾を持っている。強い肉体と生命力を持ち宇宙空間など過酷な環境にも耐えられる。強い酸性の体液を持つため、むやみに攻撃をすることもできない。 エイリアンは宿主ごとに形状や性質が異なるうえ、実験や改良など様々な手が加えられた“作られた生物”であることがシリーズを通して明かされる。スクリーンを通し人々を恐怖させてきた多彩なエイリアンたちを紹介する。 ■エイリアン・ゼノモーフ 『エイリアン』1作目に登場したエイリアン。外骨格のような硬質の皮膚におおわれ、巨大な頭部はフード状の半透明の物質におおわれている。牙の生えた口を開くと、中から鋭い歯を持つ細長い顎が飛び出す二重構造。背中にはパイプ状の器官が生え、尾の先は鋭利なトゲがついている。『エイリアン』でノストロモ号のクルーに寄生したあと宇宙に放出されたが、『ロムルス』で宇宙船に回収され研究に使われる。 ■エイリアン・ウォーリアー 『2』に登場したエイリアン。クイーンや卵を守る兵隊で、惑星LV-426ではコロニーの配線などを排泄物で固めた巣作りや宿主の収集も行っていた。頭部はフードがなく外骨格状になり、体つきも肉厚になり戦闘に特化したイメージ。集団で行動し海兵隊と激しい死闘を繰り広げる。 ■エイリアン・クイーン 『2』で初登場した大型エイリアン。身長約4.5m、ウォーリアーに守られ宮殿のような巣室でエッグチェンバーを産み続ける。頭部には昆虫を参考に巨大な冠のような器官が加えられた。巨体に対し手足が細いが、巣を攻撃された際は産卵嚢を切り離し応戦。海兵隊のスラコ号に侵入し最期は宇宙に放出されたが、リプリーへの寄生に成功する。『エイリアン4』(97)のクイーンはリプリーのクローンから生まれた新種。リプリーのDNAとの融合によって卵ではなく胎生になり、ヒトに近いニューボーンを産む。 ■ドッグ・エイリアン 『3』に登場した犬を宿主とするエイリアンで、本作の完全版では映画のプリプロ段階で想定されていた牛に変更された。4本足は獣脚に準じたデザインで、壁や天井をもともせず俊敏に走り回るが2足歩行も可能。パペットの操作性とギーガーの意向を取り入れ背中の器官がなくなった。 ■ニュー・ウォーリアー 『4』に登場したリプリーのクローンに寄生したエイリアン。水かきやヒレを持ち水中を自由に泳ぐことができる。背中に4本の器官を持ち、獣脚で2足歩行し、常に体を動かすなど生物らしい振り付けがされた。高い知能を持ち、罠を仕掛けたり酸性の体液を攻撃に使用する。 ■ニューボーン 『4』に登場したエイリアンの新種。リプリーのクローンから誕生したクイーンが産んだ個体で、ヒトとエイリアンのDNA持った混種。皮膚や頭部の形状もヒトに近く、尾も持たない。性質は凶暴で攻撃的だがリプリーを母親と思い込んでいる。 ■バトル・エイリアン 『エイリアンVS.プレデター』(04)に登場したエイリアン。プレデターによって創り出された新種で、カマのような鋭い爪を持つなど攻撃力が高められた。脚部はヒトと同じ形状に戻ったが、4つ足で走り回るなどアグレッシブなアクションを見せる。そのなかでも、プレデターのネットランチャーで頭部に傷を負った個体をグリッド・エイリアンと呼ぶ。 ■プレデリアン 『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(07)に登場した新種のエイリアンで、プレデターのDNAを持つ混種。特長的な口もとを含め、両者のデザインを併せ持つ。エイリアンの生命力や強靱さ、プレデターの俊敏さやパワー、戦士としてのメンタリティも備えた最強のエイリアン。フェイスハガーを経由することなく、寄生対象にDNAを送り込み繁殖が可能。 ■ネオモーフ 『エイリアン:コヴェナント』(17)でアンドロイドのデヴィッドが作ったエイリアン。外観はゼノモーフに似ているが、乳白色の有機的な皮膚におおわれている。性格は凶暴で、体長数10センチほどの幼体の状態から人間を襲い捕食をするが、ゼノモーフのような強靭さはない。空気中を移動する微細な胚が宿主の体内に入り込むと、短時間で成長して体を破って出現する。 ■プロトモーフ 『コヴェナント』でデヴィッドが作ったエイリアン。エッグチェンバー、フェイスハガー経由で宿主に胚を送り込むことで誕生する最初のゼノモーフである。動きは俊敏、凶暴な性格で、ゼノモーフによく似ているが形状は宿主によって異なる。 第1作から18年後を舞台にした『ロムルス』に登場するのはエイリアン・ゼノモーフ。ただし研究施設を舞台にした本作には、これまでにない見せ場が盛り込まれているだけでなく、高い知能や生態の謎の一端も解明されている。スクリーンでその圧倒的な存在感を味わってほしい。 文/神武団四郎