日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 　内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 　アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

早朝に牛を搾る遊牧民。このよう生活を見かけることがどんどんなくなってきている＝シリンゴル盟・バロンウジュムチン・ホショー（2012年8月撮影）

　牛皮は、遊牧民の暮らしを支える大切な材料だった。馬具、ブーツ、そして相撲用のジョドグ（牛革製のベスト）など、ほとんどの革製品は牛革で作られた。私が幼い時も、自分たちで牛革を加工し、必要な革製品を作る様子を見ていたし、手伝いもしたことがあった。 　しかし現在は、わずかな人しかその技で製作することが出来なくなり、大半は市場に売られている品に頼るようになってしまった。 　私が子供のころは牛車もよく使用されていたが、現在の日常生活では全く使わなくなり、牛車とそれに関連する部品や飾りなどがほぼ消えてしまった。最近は、伝統文化を守るという目的で新しく作って、ナーダムなど大きなイベントの入場式に陳列し、見せるだけのものになってしまった。（つづく） ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図

--------------------　 アラタンホヤガ（ALATENGHUYIGA） 1977年　内モンゴル生まれ 2001年　来日 2013年　日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞：2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。