【高校サッカー選手権】新潟明訓が1‐0で帝京長岡に番狂わせの勝利 「最弱世代」が見せた2年越しのリベンジ
殊勲のFW19田代。投入されたのは後半終了直前の40分。わずか3分で大仕事をやってのけた。FW19田代は「自分が出て、決めるという気持ちでした」と決意通りの活躍。「坂本(和也)監督からワンタッチで決められる選手になるように言われたので、決められて嬉しい」と顔を綻ばせた。 【フォトギャラリー】帝京長岡 vs 新潟明訓 このワンチャンスをモノにできたのは加藤潤コーチ、GK陣とのシュート練習の賜物。それだけに喜びもひとしおだった。采配ズバリの坂本和也監督。実は投入のタイミングをかなり悩んでいた。しかし「ここが勝負だと判断して、(FW19 田代を)出しました。ここで引いてはいけない、自分も攻めの姿勢で」と迷いを振り切った交代が功を奏した。 試合全般を振り返ると、新潟明訓がやや押し気味にゲームを進めた。そのなか目立ったのは再三再四、サイド突破を見せ、決勝点の起点となったMF7桑原壮汰(3年)。「そこ(ドリブル突破)が自分の強み。そこでチームに貢献できなかったら、勝てないですし、自分がやれることをやらなければ得点に結びつきません。決勝点は相手をはがして、(相手の寄せに)耐えた結果、得点が生まれました」と淡々と語った。 MF7桑原について坂本監督は「すごい選手でしょ(ニヤリ)。負けん気とスプリント力、相手にもぐっていくプレー。そして倒れない。あまりいないタイプの選手」と評した。 ただ勝因は攻撃よりむしろ守備面が大きい。新潟明訓はパスやシュートをことごとくブロック。人数をかけた、粘着性のある守備で帝京長岡の攻撃の歯車を徐々に狂わせた。 坂本監督は「立ち上がりから、アグレッシブにボールを奪いにいく守備をしつつ、できるだけ相手のコートで奪いに行こうとしました。先に失点したら、勝てないと思っていたので無失点にこだわりました。前半、チャンスを決められませんでしたが、選手には『(ハーフタイムで)0-0でも無失点だから大丈夫だよ』と伝えました。0-0の時間が続けば続くほど、相手は焦れてくると思うのでチャンスがあるかなと見ていました」とプラン通りのゲーム運び。さらに「ことしのチームは出足の鋭さと連続、連動した守備が特長。たとえ、ひとりはがされてもまた次の選手が奪いに行く。そこはポジションに関係なく、連動性をもってできました」と攻撃的守備がうまくいった。これだけの番狂わせの好ゲームを見せながら、聞けば、いまの3年生は「最弱の世代」と言われ続けた。 一方、帝京長岡は3年生が1年のとき、2022 MIZUNO CHAMPIONSHIP U-16 ルーキーリーグで全国優勝を果たした、いわば「最強世代」。 「(帝京長岡と試合をしても)まったく歯が立たない。まったく勝てなかった(坂本監督)」 「自分たちはルーキーリーグ2部でも勝てないチーム。(帝京長岡との力の差は)天と地のほどでした」と主将MF10斎藤瑛太(3年)。 その差をどうやって埋めたのか。それは日々の厳しい練習。 「試合より練習のほうがきついので試合はやるだけなので、楽しんでできています。常に練習で試合以上のプレーを意識しています(MF10斎藤)」。さらに筋トレ、走り込み、そして栄養指導により、対人、球際、切り替え、これらを支える最後まで落ちない運動量を身に着けた。 「練習をして、遠征して、強豪校と対戦して自信をつけて、いい状態で(準決勝を)迎えました」と坂本監督。仰ぎ見た帝京長岡との差を日頃の練習とMF10斎藤が話したチームの持つ「熱量と反骨心」で埋めていき、約2年。ようやく願いが叶った。MF10 齋藤は「マジで涙が止まりませんでした。この試合でひっくり返せたのはホントにやってきたことが報われました」としみじみと語る姿が印象的だった。 新潟明訓は2年ぶりのファイナル進出となったが、このままでは終われない。ここからが本番。監督就任5年で3度目の決勝進出。相手は開志学園JSC。「3度目の正直。僕も選手たちも決勝の壁を超えていきたいです」坂本監督は前を見据えた。 (文・写真=佐藤亮太)