【鹿児島県知事選】保守派と反原発派、異例の相乗りで三反園訓氏が初当選
英国の欧州連合(EU)離脱問題や経済対策などを前に参院選では原発政策に関する議論がかすんだが、同じ10日に投開票された鹿児島県知事選で、脱原発派の元テレビ朝日コメンテーター、三反園訓(みたぞの・さとし、58)氏が初当選を果たした。国内で唯一再稼働した九州電力川内原発を抱える同県で、原発推進派で4選を狙った元現職に対し、異例の一部保守派と反原発派の相乗り態勢で挑んだ選挙戦だった。
反原発派と保守系とが手を組んだ異例の知事選の背景とは?
当選後、三反園氏は「原発のない社会をつくろう。原発をいったん停止し、点検すべき。ドイツにならい、自然再生エネルギー県に変身させたい」などと話し、避難計画の見直しにも言及した。 選挙戦は、3期12年の実績を誇る元現職、伊藤祐一郎氏(68)との一騎打ちとなった。 告示日の6月23日。三反園氏の出陣式には、県内の反原発団体のメンバーたちの姿があった。第一声で「魅力的な鹿児島を広く宣伝していきたい」などと訴え、原発に触れなかった三反園氏に不満の声も漏れたが、ある男性メンバーは「川内原発の停止、点検をマニフェストとして掲げており、それは公に約束してくれたということだ。今は全力で応援したい」と期待感を口にした。 同県指宿(いぶすき)市出身の三反園氏は昨年末、立候補を表明。当初は、「原発に頼らない社会を目指す」と話すにとどまっていた。「4選という多選は弊害が出る」として応援に回った元県議会議長の溝口宏二氏ら、伊藤県政に批判的な元自民党県議らが中心に支援し、陣営は「保守系無所属」の色合いが強かった。
そんななか、5月19日には「原発即時停止」を主張して、県内の反原発団体委員の平良行雄(56)氏が出馬表明。自公が支援し、約900もの各種団体・組織が推薦を出した伊藤氏に対し、新人2人が挑む三つ巴の構図に共倒れを懸念し、4選阻止に向けて候補の一本化を求める声も高まったが、そこで壁となったのが川内原発に対する姿勢だった。 平良陣営は5月末、三反園陣営に知事就任後、原発の即時停止と廃炉に向けて尽力するよう政策協議を求めたのに対し、三反園陣営は回答を保留したものの、「川内原発を停止し、再調査、再検証を行うよう九電に申し入れる」「県庁内に『原子力問題検討委員会』(仮称)を恒久的に設置する」などと提案。告示日まで1週間を切った6月17日に政策合意に至り、平良氏は立候補を見送った。