大阪ミナミ「戎橋のチェロ弾き」、逮捕はやり過ぎ?SNSで賛否…刑事弁護士は「違法な逮捕」の可能性指摘
●警察は罰を与えるかのように逮捕制度を利用している…妥当どころか違法では
――今回の事件では、罪証隠滅や逃亡のおそれが考えられるでしょうか 今回の事件では、戎橋や周辺にかなりの聴衆がいたと思われますし、防犯カメラもある場所ですので、罪証隠滅のおそれがあるとは到底言えないと思います。また、最大でわずか5万円の罰金刑で、逃亡する人などいるのでしょうか。明らかに逮捕の必要がないと思われます。 報道によると、逮捕の理由について警察は「再三の警告に従わなかったこと」を挙げているようですが、ここまで説明してきたように、逮捕の要件は「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」です。「再三の警告に従わなかったこと」は要件にはなっていません。 むしろ、すでに誓約書を計5回も取っていたということを前提にすれば、逮捕された方は任意の出頭には応じていたように思います。罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもないと考えるのが通常の思考ではないでしょうか。 警察は、逮捕の本来の要件を超えて、あたかも罰を与えるかのように逮捕制度を利用しているとしか思えない回答をしています。国家権力を濫用していると言わざるを得ないと思います。 したがって、今回の事件は、妥当ではないどころか、違法な逮捕なのではないかとすら思います。さらに考えなければならないのは、通常逮捕、すなわち、裁判所の司法審査を経たうえでの逮捕だというところです。 任意の出頭にも応じている状態で、最大5万円の罰金刑の事案で「明らかに逮捕の必要がない」と判断できなければ、およそ刑事訴訟規則143条の3は死文化してしまいます。なぜ逮捕状が発付されたのか、検証が必要なのではないでしょうか。 【プロフィール】 中原 潤一(なかはら・じゅんいち)弁護士 神奈川県弁護士会所属。日弁連刑事弁護センター幹事。刑事事件・少年事件を数多く手がけており、身体拘束からの早期釈放や裁判員裁判・公判弁護活動などを得意としている。 事務所名:弁護士法人ルミナス法律事務所横浜事務所 事務所URL:http://luminous-law.com/