鹿児島県 出動急増、総飛行時間も増加 ドクヘリ調整委23年度実績報告 飛び控え解消など要因 運航長時間化課題、委員ら議論も
2024年度奄美ドクターヘリ運航調整委員会が11日、奄美市名瀬の県立大島病院救命救急センターであった。23年度の出動件数は前年度比117件増の349件と急増した。課題に上がる県本土や沖縄県などへの島外搬送の運航時間の増加などを要因に、ヘリが稼働した総飛行時間も前年比77時間増の約405時間と全国平均の216時間を大きく上回った。 23年度の要請件数は前年度比112件増の474件で、うち不出動が125件。17年度以降は減少が続いていたものの大きく増加。理由にはコロナ禍による飛び控えが解消したこと、離島のニーズへ細かく対応したことなどが挙げられた。 一方、総飛行時間は405時間で、4年連続で増えた。専門医など対応の限られる島では群島外への運航時間が年々長時間化しており、72%を占める県本土や沖縄県への長距離搬送の増加については、消防・医療部会から「丁寧な検証を」と求める意見も報告された。 会では23年度の実績が説明されたほか、県立大島病院の中村健太郎救命救急センター長から長時間化の解消に向けた「奄美群島の未来の医療提供体制」と題する提案があり、▽地域の医療体制▽急性期医療に関わる沖縄県医療機関との連携―などの議題で委員らが議論した。 搬送の低減に向けては、長崎県が国の事業で運用する代替搬送手段が紹介されたほか、島内でできる限り診療を進めるため、ICTを活用した遠隔医療の推進・導入協力を県や自治体に求めた。本土から離れた南部3島(徳之島、沖永良部、与論島)など、速やかな一次搬送へつなげるための医療機関との連携については、沖縄県の浦添総合病院から「現場レベルで進めていこう」との声も上がった。 運航時間の長時間化は予算の逼迫(ひっぱく)につながる恐れもある。中村センター長は会後、「医療が弱体化する中、運航時間も長くなっている」と述べ、「ドクヘリだけでは医療は良くならない。継続していくためには現場でできることは現場ですることも大事。行政の力も借りながら、奄美の医療を維持できるよう考えたい」と話した。 23年度の島別の出動件数は、奄美大島143件(前年比54件増)、喜界島50件(同21件増)、徳之島70件(同12件増)、沖永良部島29件(同1件増)、与論島3件(同2件増)、十島村14件(同7件増)だった。