健康ブームでジム通いが増加!「逆に寿命を縮める」“筋トレシニア”がはまると危ない落とし穴
まずは自宅でできる簡単トレーニングを
健康ブームにあやかって、いきなりジムに通い始めてしまうシニアも少なくない。 「基本的なことですが、持病のある方は必ずかかりつけ医に相談をして、ジムでの運動は問題ないのか確認してください。心機能に異常がある人、血圧が高い人はもちろんですが、整形外科にかかっている人も必ず確認を」 整形外科でも、特にリハビリ施設を兼ねている病院だと、理学療法士が丁寧に自分に適した運動について教えてくれるため安心だという。 また、ジムのトレーナーに、自分の疾患をきちんと伝えることも大事。トレーナーがあまり常駐していない、コンビニジムもシニアの筋トレ初心者にはおすすめできないと、櫻井先生の夫で日本フィットネス医学協会代表の坂上翔一郎さんは言う。 「例えば、広背筋などの背中の筋肉に効くので姿勢が良くなりますよと『ラットプルダウン』という機械をすすめられたとします。ですが、このマシンでは両手を大きく広げ、身体の上にあるバーを思い切り引く運動をします。 肩関節痛、いわゆる五十肩で肩の関節が硬くなっている人がやると、症状の悪化につながることも。事前に自分の疾患をしっかり伝えて、その部位を痛めるマシンや運動は避けてもらう必要があります」(坂上さん) では、シニア世代が健康寿命を延ばすために安全に始められる運動はあるのか。 「ひざ立ちスクワットが、転倒のおそれもなく、ひざへの負担も少ないのでおすすめです。大腿四頭筋という太ももの前面にある筋肉と、お尻の筋肉も鍛えられるため、高齢者の下半身の筋トレに最適です」(坂上さん) また、この運動は尿漏れ対策にもなると櫻井先生。 「膀胱や子宮を正しい位置に保つ骨盤底筋という筋肉があるのですが、加齢と共に衰えやすく、尿漏れの原因に。ひざ立ちスクワットではこの骨盤底筋も鍛えられます」
シニアの運動がもたらすリスク
骨折 高齢になると骨密度の低下から、骨折のリスクが高まる。運動全般において注意が必要。特に転倒のおそれがあるものは避ける。 ひざ(靭帯損傷、半月板損傷など) ひざに負担をかける過度なウォーキングや、間違ったフォームで行うスクワットで、加齢により強度が落ちた靭帯、半月板を損傷する可能性が。 肩(靭帯損傷、腱板断裂など) ダンベルを持ち上げるなどの運動で肩関節に負荷をかけると、肩関節の周りにある筋肉と骨をつなぐ腱(けん)が断裂してしまうことも。
1日10回「ひざ立ちスクワット」
ひざを痛めず転倒のリスクなく下半身強化! (1)正座の姿勢になる 後頭部に両手を添えて正座の姿勢をつくる。姿勢が悪くならないよう、視線は斜め上に。 (2)ゆっくりとひざ立ちになる 上体が前傾姿勢にならないようにしながら、ゆっくりとひざ立ちになる。かかとにつかない程度までゆっくりとお尻を下ろす。1、2を10回繰り返す。 教えてくれたのは……櫻井夏子先生●整形外科医・美容外科医。NEXUS CLINIC勤務。順天堂大学医学部附属順天堂医院にて整形外科に携わり、その後美容医療へ。メディア出演も多数。