《休職・無職はキャリアの汚点になるのか》空白期間を肯定的に捉える「キャリアブレイク」という第3の選択肢とは
休職や無職といった雇用から離れることを肯定的に捉える「キャリアブレイク」という文化が欧米では一般的になっている。日本では未だに無職=悪のイメージが根強く残るが、雇用から離れることで効能もある。「キャリアブレイク研究所」代表の北野貴大さんに聞いた。 居酒屋に展示された情報誌「月刊無職」
休職・無職を肯定的に捉える「キャリアブレイク」という価値観
働き続けることが当たり前のような世の中で、立ち止まることは悪いことなのか。 キャリアの空白が転職活動に不利益になったり、休職・無職者に対する偏見が未だに根強く残る日本社会。 そんな状況を打破しようと、一時的に雇用から離れることを肯定的に捉える価値観「キャリアブレイク」を提唱するのは一般社団法人「キャリアブレイク研究所」代表の北野貴大さんだ。 北野さんが研究所を立ち上げたきっかけは、妻のこんな一言から始まった。 「1年間無職をしてみたい」 当時はキャリアブレイクという言葉も知らなければ、無職に対してあまりいい印象をもっていなかった北野さん。 妻に事情を聞くと、「今まで忙しすぎたから、会いたい人に会ったり、行きたいところに行ったりして、次の人生を選択するための感性を充電したい」と言われた。こうして妻の無職ライフが幕を開けた。 無職になってからというもの、妻は日本各地を旅行に行ったり、旧友との時間を過ごしたりと活き活きと充実した日々を送っていた。 無職ライフが半年を過ぎた頃には新たなITの世界に興味を示し、学校にも通うように。その後、I T会社に転職を決めた。 北野さんがそんな妻の様子をユーモアたっぷりにブログで綴り始めると、無職や休職経験者の読者を中心に大きな反響を呼んだ。 「キャリアブレイク」という文化があることも知り、無職・休職中の人らが語り合う宿「おかゆホテル」を自宅2階に開業した。 訪れるのは、仕事を頑張りすぎて休職してしまった人や、世界一周をしたくて会社を辞めようか迷っている人など、一般的な人たちばかり。 雇用から離れた期間を「いい転機になった」と振り返る人が多かったことなどから、「文化として立ち上がったら面白いのではないか」と2022年10月、兵庫県神戸市で一般社団法人「キャリアブレイク研究所」を立ち上げた。 研究所では、キャリアブレイク中の人が学び合える「むしょく大学」を運営したり、当事者や経験者の声を綴った情報誌「月刊無職」を発行。無職の人が無料で参加できる「無職酒場」などのイベントも開催している。 「キャリアブレイクを決めた先には少なからず葛藤や苦しみもあるからこそ、第三の選択肢として選びたい人が選べる文化を育んでいきたいと思ったからです」 北野さんのその思いは1つの研究結果に結びつくことになる。
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