1日5食。渡利が12kg増量を乗り越え五輪枠獲得!
渡利にとってラッキーだったのは、2014年の75kg級日本代表・鈴木博恵(28、クリナップ)が左膝じん帯手術からのリハビリのため戦線離脱、長く日本の最重量級を引っ張っていた浜口京子も、第一線を退くと発表した直後で本命不在だったこと。転級の渡利は、スピードを生かして大会を制した。ようやく「ゼロになった五輪への道をひとつずつ」歩む道がつながりはじめた。 決戦の地、カザフスタンへやってくると、自分以外のエントリー選手との体格の違いは明らかだった。五輪出場権利がかかる準決勝のオドンチメグ(モンゴル)とは約20cm、決勝のマニュロワ(カザフスタン)とも10cm以上の身長差があった。試合開始冒頭こそ、相手のパワーやリーチの違いに苦戦した様子がみえたが、パワーのなさをスピードでカバーして得点を重ね、2月末に発覚したが温存療法で五輪に挑むと決めた右すねの疲労骨折も「アドレナリンが出まくっているからか、全然、痛さを忘れた」まま五輪出場権利を日本にもたらすだけでなく優勝にこぎつけた。 今大会では五輪出場権利を得ただけでなく、決勝でアテネ五輪銀、ロンドン五輪銅のベテランであるマニュロワにタックルをきめて勝てたことの意味は大きい。 「ずっとやってきたベテランの選手は勝ち方を知っていて自分とは差があります。その壁を破ることができたのは自信につながりました。ここで優勝したら、オリンピックでのメダルも近くなるんじゃないかと思っていました。準決勝も五輪枠をとれてすごく嬉しかったんですけど、やっぱり強い選手に勝って優勝できた喜びがプラスされて、さらに嬉しいです。」 かつて63kg級で世界選手権に出場した渡利は、ひとつひとつの動きをみると鋭さをみせることもあるものの、どこか自信なさげでアンバランスな不安定さをあわせもっていた。そのため、リードしている試合でも終盤に逆転される場面もみられた。しかし、75kg級で五輪に挑んでいる渡利には、安定感が増している。